Jan. 2, 2018
あけましておめでとうございます。
経験者はわかると思いますが、ボーイスカウトって頭悪いルールとか風習が割とたくさんあるんですよね。隊や地区によっても違いますが、筆者の隊はルーズだったのでマシな方でしたが、逆にルーズなのが原因で問題になることもあるんですよね笑。あ、文句言ってますけど別に悪い団体じゃないので経験者じゃない方は是非ボーイスカウト入ってみてくださいね笑。
これは明らかに理不尽すぎるだろ!意味不明!って思ったルールが5つ以上パッと思い浮かんだボーイスカウト経験者はツイッターでコメントして下さい!
最近記事連投しております。サイト管理人の友人Sです。
ボーイスカウトの読図技術の一つに“座票読み”というのがあります。
わかってる人は読み飛ばしていいんですけど、軽く説明しますと、地形図の図郭の左下の角を基準に500mメッシュを記入して各格子線について、X軸は左から右に01、02、03、、、、、Y軸は下から上に01、02、03、、、、、と記入し、さら座標定規(シルコン上位機種でも代用可)というものを使って1つのメッシュの四角の中を10×10の精度で、より精度を求める場合は0.5単位で縦横20等分して表現することで地点を指定します。X軸方向のメッシュ位置2桁、メッシュ内X座標1~2桁、Y軸方向のメッシュ位置2桁、メッシュ内のY座標1~2桁、の合計6~8桁の数字で地形図内の点を指定します。例えば024031はメッシュ(02,03)内の点(4,1)ということになります。
※国土地理院コンテンツ利用規約に基づく画像に関する表記
データソース:国土地理院(地理院タイル)https://maps.gsi.go.jp/development/ichiran.html
編集:QGISにて500mメッシュ作成(メッシュ生成時に経度方向のズレ有)
ここではこの技術を“スカウト座標”と呼ぶことにします。スカウト座票は専門的な用語でいうと“座標による空間参照(座標参照)”の一つの手段です。空間参照ってのは簡単に言えば位置を特定することです。身近な例だと自分の居場所を郵便番号や番地で説明したり携帯電話のGPSを使って緯度経度で表記したりすることです。詳しく知りたい人はESRIや国土地理院のHPなどを見てみてください。
スカウト座票では地形図の左下の角を原点(0,0)として6桁ないし8桁の数字(座標値)で桁数に応じて25~50mの精度で空間参照できます。小学生の頃から空間参照を学べることはいいことだと思います。スカウト座標にもいいところはありまして、ボロクソ言い始める前に一応述べますと、スカウト座標は長さが基準なので感覚的に現実世界に近くてわかりやすく、グリッドの大きさが緯度の影響を受けません。限られたエリアでの実地ユースと考えると使える場面は多いと思います。
問題はこの6桁ないし8桁の数字がユニバーサルじゃないことなんです。同じ国土地理院の地形図でも図式によって全然ちがいます。2002年と2013年に大きな図式変更がありました。特に2002年図式になったときに2つの大きな変更点がありまして、①図郭の変更、②測地系の変更、です。詳しくはまたあとで述べますが、これが結構ひどくて同じ座標値でも数百メートル単位でズレます。この図式が日本全国で同じタイミングで改定されてりゃいいんですけどまだ改定作業途中で場所によって図式が違うんです。そうすると地形図を買った日が違っただけで、あれ?同じ座標なのに人によって場所全然違くね??とか、リーダーだけ古い地図で場所が違う!!みたいなことが起こる可能性が否定できないのです。
まあ、あとはあの方眼をズレずにきれいに書き込むってのが超難易度高いのもあります←結構切実(笑)
話を戻してそもそもなんで問題になるかと言えば、スカウト座標は地図の左下の角を0として長さを基準に座標を使っていますが今の地図は左下の角の場所の基準も昔と違いますし、地図の縁も曖昧になっているので左下の角の位置も一覧表を見ないと経緯度を割り出せないみたいなことになってるからです。この座標読みを導入したのは多分昔の人です。スカウト座標が使われ始めた当時はそれほど大きな問題じゃなかったと思いますが、現代の読図事情ではややこしい問題になります。地形図の規格変更も今世紀に入ってから起こったことですし。そして読図における何よりも重大な変化、
今の時代、誰が地形図なんか買ってんだよ!!
今は皆さん電子国土使いますよね。そもそもシビアな読図では2.5万分の1地形図でも縮尺全然足りないですし便利です。アウトドアで使うときは印刷してラミネートしちゃうのがオススメです。
※画像に関して本記事最後に注釈
電子国土だと縁とかいう概念ないですよね。また、電子データで地形図を購入する場合も図郭を自由に設定できます。こうなるとスカウト座標の0の位置がなくなってでけへんやん!ってなるんですよ。昔は基準点がきちんと定義できたからスカウト座標も意味があったんですけど現在はそのあたりが曖昧になってるので空間参照の手段としてはやはり厳密性にかけてしまって使い続ける意義も半減してます。座標参照における基準点の重要性を甘く見すぎです。それなのに昔からやってるしとかそういうくだらない理由で頑なにやり続けてるんでしょうねえ。どうすりゃいいかって、そりゃあ緯度経度使いましょうよ。さ~てスカウトハンドブックを読み返すと、、、
ああ。。努力目標だったのね。だからボーイスカウトの教育はスカウト座票で止まってたのね。でも携帯電話でGPSも普及してるんだし緯度経度やっといたほうがこの先絶対役に立つと思うんだけどなあ。。。
そんなのを傍目に上っぱのオジサマ方は新課程の2級スカウトの項目に“バックベアリング”をぶっこみましたけど、はっきり言います。
バックベアリングは日本国内では超非実用的な超高等技術です。
あんなのやるくらいなら緯度経度の空間参照やったほうが絶対良いです。
真面目に読図してりゃ地形が入り組んでる日本のフィールドじゃあんま使えないことくらいすぐわかると思うんだけどなあ。。。バックベアリングってのは目標物が目視できない時に帰還するための最終手段であって精度を上げるためには高度な方向感覚と距離感覚を要求します。読図作業は様々な技術を複合的に駆使するので引き出しが増える点で無駄とは言いませんが、それやるくらいなら形にこだわるのをやめて地形図とコンパスだけで道のないところを歩きまくる方が実用的で応用力がつくと思います。というか道のないところを歩きまくればバックベアリングだってできるようになります。なんだかんだでボーイスカウトの読図教育は高度ですから読図の基礎力がしっかりしてないと形ばっかやっててもフルに活用しきれません。筆者もまだまだなのでこれからも努力を積み重ねていきたいです。
なんでズレるのか
真面目に書くとそれこそ一冊の本になってしまうので軽~く説明します。詳しく知りたい方は筆者の大先輩でもある阿部さんって人が書いた“イラスト読図”っていう本に超わかりやすく載ってます。地形図には大きくわけて3つの図式があります。1986年図式、2002年図式、2013年図式です。1986年図式から2002年図式に変更したときに大きく図式を変更しました。まだ改定作業の途中で場所によって図式が異なります。日本地図センターのサイトに行くとどこまで改定が進んでるか確認できます。
この四角ひとつひとつは基本区画と言われるもので地形図の範囲の基準です。基本区画は南北に緯度5’、東西に経度7’30”の範囲で作られています。勘のいい人は気付くと思うんですけど、実はこれ長方形じゃないんですよ。さらに言えば北海道と九州では大きさが違います。
①測地系の変更
皆さん覚えてますでしょうか?今から5年ほど前にアップルのiOS6でマップアプリが初めて実装された時に起きた“パチンコガンダム駅”騒動。地図上の間違いがたくさんあって騒ぎになったのですが、これは測地系の変換に関連する部分に不具合があったために起こったと言われています。21世紀に地形図を扱う限りはどうしても測地系は考えなければいけません。
測地系っていうのは地図を作るときの一番基礎になるものさしです。このものさしが変われば全く同じ場所でも緯度経度の数字が変わります。2002年図式に変更したときに日本測地系から世界測地系というものに変更しました。その結果、地域によって違いますが、だいたい400mくらい南東にズレました。でもGPSで使われているのが世界測地系ですから2002年図式以降ではGPSの位置データを変換無しで地形図に示すことができます。
興味無い人はここから十行くらいは読み飛ばしてもらってもいいのですが、詳しいこと言いますと、日本測地系採用の1986年図式は1998年ごろから世界測地系の補助目盛りが入ってます。世界測地系採用の2002年図式と2013年図式では日本測地系の基本区画の位置が青三角の目盛りで示されています。2002年図式では“地形図の基準”欄に日本測地系への変換方法が書かれていますが2013年図式では消えています。また、厳密に言えば測地系の変更でマクロなレベルでは地図の歪み方もビミョーに変わるのですが、地形図レベルでは実用上考慮不要です。
とりあえず2002年図式からは経緯度がズレていると覚えておいてください。
②図郭のサイズ変更
2002年図式では測地系以外にも大きな変更点がもう一つあります。1986年図式では図郭=基本区画でした。すなわち、1枚の地形図の上に地図として印刷されてる部分は基本区画の範囲、緯度5’×経度7’30”だけでした。しかし、2002年図式では図郭≠基本区画です。2002年図式からは図郭の縁の部分は隣接する基本区画と重複しています。図郭は基本区画よりも北側と南側は緯度20”分、東側と西側は緯度によって異なる分だけ広く表示してます。これはおそらく2002年図式以降の図郭内に旧測地系の基本区画が入るようにするためです。
※画像に関して本記事最後に注釈
1986年図式は地図の四隅は基本区画の四隅と一致するので経緯度表記がありますが、2002年図式以降は地図の四隅の経緯度は簡単にはわかりません。
さらに、2013年図式では基本区画の目印がいくつか消えているので地形図上で基本区画の範囲が簡単にはわかりません。国土地理院的には地形図の縁なんかどうでもいいだろって感じなんでしょうね苦笑。
とりあえず2002年図式からは地図の範囲が広くなっているって覚えておいてください。
まとめ 2002年図式以降は ①地図の位置がズレてる ②地図の範囲が広くなってる
じゃあどうする?
緯度経度を使うようになってくれたら一番いいんですけどスカウト座標はボーイスカウトが頑なに守り続けるこだわりなんでしょうねえ。。。
また、最初に書いたように確かにスカウト座標が優れているところもあるので全く意味がないとは思いません。ただ、基準点の位置が図式で違うのがどうしても問題になってしまう。まあ、わかってる指導者は活動でスカウト座標を使うときはキッチリと地図を指定してくるはずなので問題になることは多分ありませんが。問題になる可能性はかなり低くて、問題が起こるとすればリーダーが昔からずっと同じ地形図を使っててスカウトの改定後の地形図とズレるってパターンでしょう。
理想を言えばスカウト座標を活動で使うときは格子入りの地形図データをあらかじめスカウトに配っておくのがベストなのですが、それには専門的な知識が少し必要なので、せめて基準点だけでも厳密に定義しておくべきでしょう。たとえば世界測地系の北緯○○、東経○○を基準点とした500mメッシュ、といった具合にです。
でも最悪ほかの人と図式が違ってズレて困ってもなんとかなります。
地形図の縁の目盛りを見たことがありますか?青三角マークを探してください。 無い場合→1986年図式の地形図です。 ある場合→青三角の位置が1986年図式の縁です。 新しい方の図式を持ってる方は自分の地図の角と古い図式の図郭の角がどれくらいズレてるか、具体的に言えば青三角マークが地図の左下の角から北方向と東方向に何㎜離れてるか定規で測りましょう。そしたら補正できますよね?
でもさ、みんなGPS内蔵のスマホ持ってんだからさっさと経緯度に移行しようよ~
定規あれば地形図ででも簡単にできるんだからさ~
その方が社会に出たとき役立つと思うな~(使う機会は多分無い笑)
[追記May.29,2018]
カモシカスポーツでなんとこんなものが売ってました!!!
相変わらず品揃えがマニアックです。
日本連盟さん、スカウトショップでの取り扱いをマジで検討した方が良いと思います。
国土地理院コンテンツ利用規約に基づく表記 ※がついている画像は国土地理院(http://www.gsi.go.jp/index.html)が提供する電子国土(https://maps.gsi.go.jp/#5/35.362222/138.731389/&base=std&ls=std&disp=1&vs=c1j0h0k0l0u0t0z0r0s0f0、しかし表示座標値をずらしたもの)を画面に表示したものをスクリーンキャプチャしたもの、またはそれを描画ソフトで加工したもので、公的な性質のある組織が作成したものではありません。