実用フォルダーのベンチマークDec. 3, 2017
武器(カトラリー)を忘れてその辺の枝で箸作ったけど友人に木切れと間違えられて焚火にポイってされたことがある人がいたらツイッターでRTしてください!
筆者は高校生時代、現在北海道の著名な熊猟師K氏の弟子をしてるS君とこの時期に毎週末のように河川敷でキャンプをしていたのですが、S君が木切れを削って箸を作っても毎週のようにそれを筆者が間違えて焚火に放り込んじゃって文句言われてたのを思い出します笑。彼は今何をしているのだろうか。。。
今日もAGECアウトドアにアクセスしていただき、ありがとうございます。サイト管理人の友人Sです。今回は1st coolにピンポイントでフォーカスしていきましょう!1st coolとは純粋な道具としての機能性、どれだけ機能的で現実的でハイパフォーマンスかの魅力です。2nd coolは逆に情緒的な価値や趣味性、ただただその道具が好きだっていう魅力の側面です。
実用。それには何が求められるのでしょうか?
使いやすさ、低価格、パフォーマンス、軽量性、汎用性、強度、、、、、
それらのバランスをハイレベルで実現している道具が実用的だと筆者は思います。
そしてエンデューラやデリカはその水準点だと思います。
やっぱ世界中でバカ売れしてるだけあります。
フォルダーの実用性を判断する時、常にエンデューラやデリカと比べています。
正直あんま見た目はかっこよくないと思います。
でも厳しい目標に対してやりたいことを実現してくれる。
それが実用品です。
エンデューラとデリカの登場って実は28年も前なんですけど、その進化をずっと見てると思うことがあります。
スパイダルコってメーカーは実用性をすごい追求するんですよね。
インコシのレビューでCRKが技術的追求をするメーカーだみたいなこと書いたと思いますが同じような感じでスパイダルコは実用性を追求するメーカーだと思います。技術にしろ実用性にしろこういう追求をCQI(constant quality improvement)って言います。
ラブレススタイルやバック、ガーバーが実用デザイン最先端という時代は終わりました。まあ昔は実用していたわけで別に今でも実用するのに問題があるわけでもありませんが無駄に重いコンポーネンツに水を吸ったら終わる革シース、、、あえて選ぶ理由もないです。それよりは旧車みたいにたまーに使って普段はデザインやスタイルを楽しむ方がずっと楽しいです。
フォルダーに関して言えばスパイダルコがクリップとサムホール(とセレーション)を発明して現代フォルダーの革命を起こしました。
そしてここ数年では軽量化にものすごい力を入れています。スパイダルコCEO、サル・グレッサー本人が“パワー・ウェイト・レイシオ”という言葉を使い始めたくらいです(※SHOT2017)。良い時代です。
実は最近デリカ・エンデューラは名称変更しました。中身は全く変わりませんが製品名は
“デリカ/エンデューラ4 ライトウェイト”
となっています。まあ実は先代モデルの方が軽いんですけどね苦笑。
ちなみに筆者のナイフの実用性の評価基準はバックパッキングや野宿での経験が大きく影響しています。数十グラムの違いがなんだ?たしかにこの差を感じることは難しいかもしれません。だから普段の生活じゃ関係ないんですけど、例えば兵隊さんとかバックパッカーとか装備がうん十キロになる用途ではものすごく重要です。てのも数十gを馬鹿にする人の装備はだいたい重いです。数十グラムの積み重ねがあっという間にキロ単位で変わってきますから。というかこうなると何グラム軽いかじゃなくて何%軽いかが大事です。それに40㎏とかの荷物を担いで山を”歩ける”のと”歩きたいか”は全く別の問題ですし。快適性だけではありません。重さは行動スピードや疲労度に響き、それは安全性に直結します。特に行動スピードが遅いと危険地帯に滞在している時間が延びてリスクが増えます。だから重さってのは使いやすさとか以前にそもそもそのアイテムを装備に加えることができるかどうかを決めてしまうんです。
というか目的がなんであれ道具の欠点を解決するのに重くする方向に直すのは簡単なんですよ。でも軽くするのはやっぱり技術が必要です。それを真面目に追求するメーカーが出てきたのは業界の大きな進歩です。
Spydiewikiにエンデューラとデリカの詳細な歴史が記載されているので興味ある方は是非見てみてください。
エンデューラはこちら
デリカはこちら
目次
スペック
スパイダルコ(spyderco) エンデューラ4FFG・デリカ4FFG 全長:エンデューラ223㎜・デリカ181㎜ 刃渡り:エンデューラ88㎜・デリカ65㎜ 刃厚:エンデューラ3.0㎜・デリカ2.5mm ハンドル厚:エンデューラ11㎜・デリカ10㎜ 重量:エンデューラ95g・デリカ65g 鋼材:VG-10 グラインド:FFG ロック:ミッドバックロック ハンドル材:FRN(ザイテル) 製造:G・サカイ
デリカはEDCに最適な3インチクラス、エンデューラは刃渡り3.75インチなので3.5インチクラスと4インチクラスの丁度真ん中あたりです。重さはライナー有のフォルダーにしては軽いです。
ZDP189ブレード、セイバーグラインド、セレーションエッジ、DLCコーティング、エマーソンWAVE付き、トレーナー、シープスフットブレードなど様々なバリエーションがあります。H1のソルトシリーズは耐食性の関係で前代モデル(第3世代)の構造を継承しています。
また、スパイダルコはスプリントランという限定生産モデルをやってます。エンデューラやデリカなどの人気モデルの材料や色などの仕様を少し変更したモデルが頻繁に作られてます。G10ハンドル、青紙スーパーブレード、スタッグハンドル、いろいろあります。ほかにも販売店限定モデルもあります。
最近はスペック的にもっとキレてるモデルもありますがこいつは元祖という点でベンチマークであり続けるのです。
製造がGサカイなので他の海外メーカーと比べてアフターサービスだったり修理に出したりするのが圧倒的に楽です。また、面白いことに国内ではナチュラムあたりが一番安かったりします。値段はスパイダルコのライセンス料が入ってるので激安とは言えませんが十分安いと思います。というか、日本での方が安く売れるはずなのにアメリカと日本で値段が変わらないのはマーケティングの一環かと予想します。まあ値段なんて常に変動しているので気になる方はご自身でお調べください。
用途
フォルダー何買えばいい?って言われたらとりあえずエンデューラって答えます。EDCなんかで小さいのが良ければデリカって答えます。やっぱりハンドル、ブレード、クリップ、ジンピング、、、あらゆる面できちんと要点を抑えているんです。筆者の好みってのもありますけど。まあナイフ好きなら趣味で好きなもん買えばいいんですけど誰もがナイフ好きというわけでもないんで。
EDC、バックパッキング、フィッシング、その他アウトドア全般、タクティカルぶっちゃけほぼ何にでも使えます。タクティカル、ここでは兵隊さん用ってことにしときましょう。でも耐食性が高いとはいえ海水環境ではさすがに厳しくなるのでそういう場合はソルトシリーズを勧めます。やっぱりバランスがいいのでいろんな装備システムに組み込めるんですよね。ホント良いナイフですわ。
いろんな記事で何度も書きますが装備はシステムです。ナイフだけ持って活動することは無いですよね。それぞれの装備がそれぞれの機能をはたして一つのシステムとして機能します。機能性というのはシステムの中で他の装備とどう適合するかです。その用途でのナイフとしての使いやすさを維持しながら高い携帯性を実現することが重要になります。いろんな装備システムがありますが、それぞれナイフに要求するものは違います。エンデューラ・デリカは薄くて軽量ながらこれから述べていく実用ナイフとしての要点はきっちり押さえてるんです。
軽量コンパクトとパフォーマンス
これが両立できているからどんな装備システムの要件にもだいたい対応できるんです。この両立こそがエンデューラ・デリカの伝説的な功績の基盤になっているのです。
さて、こんなに優秀なナイフ、使い勝手はどうか?はっきり言って極めて普通です。特徴、癖、個性といった自己主張が無くてナイフ好きからすれば物足りない部分があります。でも普通ってすごいんですよ。バランスの良さゆえに使っている間は作業のことだけに注意が向いてナイフのことを考えないですむ。癖があってナイフのことに意識が行ってしまうようなナイフはすっごい面白いんですけど、やはり道具としてはダメなんです。もしバイク乗ってる人がいましたらCB400SFを思い浮かべてみて下さい。あまりにも完璧すぎて面白くない。でもライディングを追求していけばかなり深い領域まで付き合ってくれる。これが“普通”のすごさなんです。逆に珍車などの面白さはバイクの要求に乗り手があわせて追従しないといけないところ、すなわち“癖”だったりするわけでこれが趣味性の一つの側面でもあるんです。
話を戻しまして、エンデューラかデリカどっちか一本なら汎用性の観点からエンデューラがお勧めです。料理したりとか一般的なアウトドアユース、武器としてとかやっぱりエンデューラのサイズが有利な場面は多いです。ナイフの武器性についてはちょっと触れにくい部分ではありますが、本サイトの立場をまとめた記事を執筆中なので半年以内に発表すると思います。てかナイフコンバットなんて筆者は超素人なんで何も言えませんが、どの流派なのかによって何が良いコンバットナイフかは違ってくるんじゃないでしょうか。細かい作業する時やEDCではデリカの方がいいですが、エンデューラでも問題なくできます。でもやはり3.75インチブレードのエンデューラはEDCには大きいと感じる人が多くてデリカのような3インチクラスがEDCでは主流です。デリカでもデカすぎるって場合も大丈夫!そういう人のためにドラゴンフライがいますから。ていうか、銃刀法的には正当な理由が無ければドラゴンフライじゃないと厳しいです。
でもEDCするならデリカとエンデューラでコンボでしょ!
結論ほぼ何でも使える。EDCならデリカ、それ以外の用途はエンデューラ。
ブレード
ブレードはX軸、Y軸、Z軸、すべての方向に対してテーパーがかかってるのでどんどん食い込んでいきます。
難しいことは言ってません。見るからに使いやすそうな形してます。根元では幅広く、先端に向かってだんだん細くなるリーフブレード。ストレートからなだらかなカーブエッジとなり、汎用性にすぐれています。厚みも同様に先端にむかって薄くなっていきます。
グラインドはFFG(Full Flat Grind)。スパイダルコはここ数年はFFGを積極的に採用するメーカーですが、実は長い間ユーザーがポイントを折ってしまう懸念を持っていてFFGを採用しませんでした。でもFFGにするとグラインド角が小さくなって食い込ませる時の抵抗が少ないんですよね。他のグラインドと比べて削る量が多いので製造が大変ですが、結果的に食い込みだけでなく重さも軽くなります。まあコンクリートに落としたらポイントがバイバイしちゃうかもしれませんけど細いポイントは先端で細かい作業をする時に圧倒的に有利です。エンデューラよりデリカの方が先っぽがとんがっていて細かい作業向けに振ってるデザインになってます。まあ、ブレードの形やハンドルの形はナイフを使っていかないとわからないし、逆にいろんなナイフを使っていれば段々見るだけでわかるようになっていきます。それでもたまに見た目に裏切られることもありますけど。
鋼材はみんな大好きVG10。鋼材の組成については基本的に勉強不足なんで使った感じで書きます。刃持ちはそこそこですが、研ぎやすくて良いエッジが付きます。そんで耐食性がすごくいいです。海水環境での使用をしない限りは錆びることが問題になることは少ないでしょう。筆者は汗かきなのでEDCブレードの耐食性が高いのはプラスです。VG10はチップしやすいですがフォルダーなのでそこは特に問題では無いです。耐食性寄りに振ってるバランスの良い優秀な鋼材です。まあ超主観ですけど中の上って感じですかね。
サムホール。ま、スパイダルコですからね(笑)。マニュアルアクションでブレードをオープンする方法はサムスタッド、フリッパーなどいろいろありますが、筆者はサムホールが一番好きです。慣れの問題ですが、サムスタッドと比べたら大きい穴の方が指でとらえやすく感じます。分厚い雪山用グローブを付けての片手操作となるとやはりフリッパーに軍配が上がりますが、かじかんだ手でやろうとすると落としやすいという欠点もあります。まあ、それぞれの長所・短所があるんで完全に好みの問題です。でもサムホールの利点は何よりもジップタイ1本でウェーブ機能が付与できてしまうところにあります。ポケットから抜くと同時に開けるんでスイッチブレードより速くて簡単です。
GIMPING! GIMPING! GIMPING! GIMPING! GIMPING!
スパイダルコはジンピングをつけることに関しては天才です。荒すぎず、すべらない。力の入力を確実にしてくれます。文句無し!
ハンドル
FRNハンドル。“ザイテル”っていうとなんかカッコいいんですけどただの繊維強化ナイロンのことです。ただのプラスチックなんだし安っちいじゃんって言う人もいます。まあそうなんですけど、1st cool、機能性に注目すれば超優秀です。
まず、軽い。G10やマイカルタよりも軽くなります。そんで強い。車から航空機にまで使われてます。剛性は低めですが強度はそれなりに高いです。安い。金型で大量生産できます。色の自由度が高い。材料に色混ぜるだけですから。形の自由度が高い。金型の設計次第で自由です。設計次第でネジなどの使用を最小限にすることもできます。そしてただのプラスチックなので錆びない、水を吸わない。まあ熱に弱いってのはあるかもしれませんが一般用途ではまず問題じゃありません。熱のことを考え始めますと何よりも人体が先に負けますし、鋼材の焼きが戻ることも考えなきゃいけなくなりますし。耐摩耗性は?使ってりゃちょっとはすり減るかもしれませんけどそこはG10だってなんだって全部同じですから。じゃあ薬品耐性は?おめえそれ何に使うんだよ笑!
FRNは素材として滑りやすいって問題がありますが、スパイダルコのヴォルケーノグリップぐらいクレイジーなことすれば全く問題ではありません。はっきり言ってヴォルケーノグリップはすごいです。さすがスパイダルコです。汗、泥、血、、、どんな環境でもハンドル中心から外側に向かう方向への滑りに対して強烈なトラクションが働いてハンドルを手の中にとどめてくれますから。方向性のあるトラクションが働くハンドルってそれほど多くありません。ブレードのジンピングと合わせてナイフをきちんとコントロールできます。特に”タクティカルナイフ”って言うにはトラクションがしっかりしてなきゃダメです。
筆者は正直、黒のFRNハンドルとか嫌いです。それじゃあ大衆車のダッシュボードと同じじゃないですか(笑)。ある素材を採用するからにはその素材の良さを引き出すべきだと思います。だからこそFRNハンドルはポップな色じゃないとちょっと残念に感じます。色んなカラーバリエーションを用意したフォルダーってのも今の現行のエンデューラ・デリカ4から始まったと思います。まあここは2nd coolの問題なので人それぞれですけど。でもこの緑、灰色混じってる感じでなんかキモいんだよなあ。。。
エンデューラ・デリカのハンドルを見るとフィンガーグルーヴの位置が同じになっています。まあフィンガーグルーヴが筆者の指にピッタリあってるわけでもないのでまあ同じだからなんだみたいなところはありますけど。指にあってなくても浅いグルーヴなので特に問題じゃないです。この手の浅いグルーヴは指が触れる面積を増やしてハンドルを大きく感じさせる効果があります。まあ、大きく感じさせる効果って言ってもそれも限度があってハンドルが短けりゃ結局は何やっても窮屈なんですけどね。話戻しまして、ブレードもそうなんですけど、デリカはただエンデューラを縮小したものではないのです。サイズを変える部分、変えない部分、ただ縮小する部分、形状を変化させる部分、実用という視点できっちり判断したデザインなんです。いやあ、スパイダルコさすが!ってなるところです。
また、デリカは3インチクラスにしてはハンドルが大きくて使いやすいです。ハンドルが短すぎるナイフが世の中にあふれている中であえて大きめのハンドルを採用するあたりはスパイダルコらしいです。もちろん折りたたんだ時の全長も長くなってしまうので良いか悪いかはシステム次第です。
エンデューラもデリカもハンドルの角が丸く、快適です。厚みも薄いのでEDCでも快適です。ブッシュクラフトナイフのように分厚くて丸くて当たり前に快適なハンドルをフォルダーでやっても無意味です。それよりも携帯性を上げるために薄くしつつかつ快適なハンドルを作れるかが腕の見せどころだと思います。それに丸いハンドルはこのサイズ域で多用するねじる動きでトルクをかけにくいですしね。その辺はさすがというか上手くまとまっています。デリカもエンデューラもハンドルそのものの厚みは同じですが、刃厚の違いでデリカの方がエンデューラよりすこし薄いです。
筆者はフィンガーチョイルがある方がエッジの近くに指をかけてコントロールできるので好みなのですが、そういう人のためにストレッチって奴がいます。
クリップはどちらもスパイダルコのスタンダードなクリップ。一番好きなのはワイヤークリップですが、これでも別に問題ありません。厚い生地のズボンでもノープロブレム。ヴォルケーノグリップはクリップの下にちょうどロゴが来て引っかからないようにできてるのでポケットからの抜き差しでポケットがボロボロになることはありません。4wayなのでティップダウン派でも左利きでもノープロブレム。ティップアップでポケットから2㎝ちょっと出ますが、許容範囲内。ハンドルは特に問題なし。普通に使いやすいってやつです。
さて、熾烈な議論になるであろう、”フォルダーにライナーは必要なのか?”問題。筆者は基本的には不要だという立場です。もっと具体的に書くなら装備システム次第です。詳しくはこちらの記事で説明しています。もしライナーを入れるなら肉抜きライナーにしてほしいと考えています。デリカ・エンデューラは結構肉抜きされてるので〇です。
さて、ここで先代のことを考えてみましょう。第3世代のエンデューラ・デリカはライナーがありませんでした。それがヴォルケーノグリップ採用の第4世代以降のハンドルに変更されたときにライナーが追加されました。なぜでしょうか?内部事情をよく知らないのであくまでも推測ですが、どうしても横方向のガタつきが出ちゃうんだと思います。もしかしたらこじって壊す人が多かったのかもしれませんがこじったらセイバーグラインドだとしても多くの場合、ハンドルよりもポイントが先に負けるんじゃないですかね?そもそもフォルダーでおもっきしこじっちゃダメです苦笑。H1採用のソルトシリーズが第2世代のハンドルを継承しているあたりからして強度自体は問題ではないけどガタつきが出るからってことじゃないかなと予想します。
上で少し述べましたが、ソルトシリーズが旧世代のハンドルを採用してるのは耐食性を維持するためで、パシフィックソルトの場合、ネジは全部でたったの3本、そのほかの金属部品はブレード、ロックバー、スプリング、クリップだけでそれぞれが耐食性を考慮した材質が選択されています(多分18-8ステンレス?)。ただ、シンプルな構造で耐食性は得られるものの、どうしても横方向のガタつきが出ちゃいます。また、現在のスパイダルコのライナーレスモデルの先駆けとなったマニックス2LWではFRNではなくFRCPっていう新開発のポリマーに変更してます。使ってるだけではFRNとFRCPの違いはよくわかりませんけどFRNでは剛性不足、強度不足だったのかもしれません。また、マニックスではピボット付近にライナーと呼べるかわかんないくらい小さい金属片が入ってます。使っているだけじゃ確実な結論はわかりませんけど、多分これら両方のおかげで、あくまでも筆者の使い方ではですが、マニックスに横方向のガタつきが発生していないのだと思います。次の第5世代でのエンデューラ・デリカでライナーレス化はかなり現実的だと思います。
ロック
バックロックです。どんなロックにも長所と短所があり、どんな種類のロックが採用されているかで設計者がどういう使い方を想定しているか、何を重視していて何を妥協しているのかが少し見えます。そのナイフの性格とでも言うべきでしょうか。インコシなどほとんどのモデルでフレームロックを採用するCRKと対照的で特に実用モデルでのバックロック採用って選択はスパイダルコらしいとも言えます。
とりあえず、バックロックの特徴。とにかく破壊強度が高い。ハンドルの構造やタンぐ形状なども影響するので一概に言えるわけではありませんが、破壊強度は最強クラスです。エンデューラ・デリカの場合、下の画像のようにタングが先に破壊されます。
破壊強度は高いのですが、逆に耐久性は低いです。使ってると縦方向のガタつきが出ちゃいます。理由は簡単で衝撃が加わるとロックバーとタングの接触面に直に衝撃が伝わってわずかに変形してしまうからです。バックロックは変形した分だけより深く噛み込むような構造じゃないので変形した分がそのままガタつきに出ます。そのせいか趣味性を重視する“ナイフ好き”には好まれない傾向があります。まあ使用中に不意に畳んじゃうような危険性がなければ道具としてはノープロブレムです。2nd cool、趣味性的にはガタつきが出るのは嬉しくはありませんけど。ロックの操作性を見てみると、解除は握るだけで簡単です。小っちゃいつまみを押すとか引くなどの細かい動きではなく、ただただ握るだけなのでかじかんだ手や雪山用の分厚いグローブを付けていても解除できます。
逆に、片手操作をする時はどうしても2ステップになります。①ロック解除、②ちょっと持ち替えて畳む、という2行程になります。閉じた状態のディテントは背バネのテンションがあるのでタング形状次第で自由に変えられます。また、現行のエンデューラ・デリカでは関係ありませんがバックロックはライナーに依存しないメリットもあります。
バックロックを採用する設計には、”これはあくまでも道具である”、というスパイダルコの考え方がそのまま出ているんです。
エンデューラ・デリカはどちらもバックロックで背バネのテンションがかかっているのでスムーズではありますが、ブレードリテンションが少し重いです。アクシスロック採用のグリップティリアンなんかと比べると少し多めに力を入力する必要がありますけどアクション自体はスムーズで引っかかる感じは無く、力の入力に対してリニアに動いてくれます。まあ、力が必要といっても開け閉めに苦労するわけではありませんが。要するに一般的なバックロックです。
ロックバーにはデイヴィッド・ボウイ・ディテントって言う窪みがついてます。もともとはナイフ使用中にハンドルを握り込んでも不意にロックが解除されないようにつけられていますが、筆者の緑のエンデューラのようなロックの噛み込みが甘いB級品じゃない限りは必要ありません(笑)。実際にはロック解除の時にナイフを見なくても手の感触でどこを握ればいいのかすぐわかるって点で有効な機能だったりします。
あと一応付け加えときますが、ほかのフォルダー同様、ピボット筆頭に、ネジは使ってるうちにゆるんでくるんで定期的に増し締めするなりロックタイト使うなりして下さい。
競合モデル
1st cool重視で総合性能が優れたフォルダーを中心で見ていきます。でもまずは面白いのから行きましょう。細かい事はそれぞれのレビューをする機会があればその時触れます。
モーラ
3.75~4”ブレード、100g強、¥1500~2000
えー?!!!!フィクストじゃん!
ブラッドフォード ガーディアンなどのようにフォルダーを代替する軽量フィクストっていうコンセプトは結構あります。
ここでちょっと考えてみてください。エンデューラと同じ刃渡り3.75”のサイズで比べるとエンデューラが95gでモーラベーシックがシース込み108gです。ハーフタングの採用とFRNのシース(カイデックスよりも軽い)を採用することでこの驚異的な軽さを実現しています。って言うことは、装備システムがプラス13g許容できればフィクストが組み込めます。ハーフタングと言っても強度はフォルダーよりは上ですし、フォルダーを選ぶことで妥協してきたフィクストの利点が全て得られます。モーラをフォルダーの競合として捉えるとかなりの強者です。グラインドや鋼材、細かいところを見ていくとやはり価格の影響を受けていますが、値段とパフォーマンスを考えるとモーラだしって舐められませんよ!
筆者個人の感覚では100gっていう数字が3.5”クラスの実用フォルダーの一つの大きな指標なんですけど、それは結構モーラのせいだったりします。
(追記Feb. 23, 2018)ツイッターでハーフタングではなくナロータングでは?と指摘されました。調べてみるとモデルによってハーフタングとナロータングがあり、コンパニオンはナロータングと言った方が適切と思います。厳密に言えば両方の意味を含むpartial tangという単語が適切でした。筆者の勉強不足でした。申し訳ありません。
ベンチメイド グリップティリアン
ミニ 2.91”ブレード、80g、鋼材154CM
フルサイズ 3.45”ブレード、110g、鋼材154CM
古くからの超有名な競合モデルです。道具としては蜘蛛が上、ナイフとしては蝶が上。はっきり言って道具としての”総合性能”だけを見ればエンデューラ、デリカの方が絶対上です。重さもそうですし、ハンドルテクスチャもヴォルケーノグリップの方がはるかに良いです。特にデカい方のグリップティリアンはテクスチャの凹凸自体も大きいのでトラクションはまあまあです。どういうわけかベンチメイドのジンピングは上手く指に食いつきませんしFFGのオプションも無いです。このメーカーは実用面のCQIの詰めが甘くて文句はまだまだたくさんありますけど、逆にグリップティリアンが優れているところもあります。アクシスロックがその筆頭でしょう。アクシスロックは強度と操作性と耐久性のバランスを高次元で実現しています。だってアクシスロックって遊んでるだけで楽しいじゃないですか(笑)。また、アクションの軽さやスムーズさってところではやっぱりベンチメイドは超強いです。フォルダーの依存度が高いシステムや2nd coolをより重視する場合は有効な選択肢です。
スパイダルコ ストレッチ2LW
http://theoutdoornerd.com/2016/02/photo-review-spyderco-stretch-hap40.html
3.45″ブレード、105g、鋼材VG-10
以前持ってましたが他人にあげてしまったのでこれも手元にはないです。エンデューラの陰に隠れてあまりにも存在感が薄い奴。いや、普通に優秀なナイフなんですよ。スプリントランもやってますし。エンデューラ同様中身はそのままで最近名前にLWを追加した改名詐欺ですが、重さは3桁に突入してグリップティリアンに近づいてきてますから特に詐欺感が強いです笑。それでもフィンガーチョイル採用で操作性良し、ブレードもこっちのほうが好みという人も多いんじゃないでしょうか。サル・グレッサーが自分用としてデザインしたんでその辺のこだわりポイントが光ります。エンデューラと比べてみてどっちが良いかはシステム次第ですね、っていうか普通の人からすりゃおんなじだろってなりますわ。なんかスパイダルコのラインナップでの立ち位置がイマイチよくわからない。優秀ではあるが、あえてストレッチを選ぶ理由もそんなに無い。うん、なんか可哀そうな奴だ。
SOG イージス
ミニ 3.0″ブレード、57g、鋼材AUS-8
フルサイズ 3.5″ブレード、89g、鋼材AUS-8
日本国内での知名度はそれほど高くないかと思いますが、イージスも古参の競合モデルです。残念ながら所有してないので詳細は書けませんが、超ディープキャリークリップ、ジンピング、汎用性のあるブレード、超軽量、きちんと道具としての要点は抑えてます。鋼材はアップグレードできるはずだと思います。ハンドルテクスチャも改善できるはずです。SOGのフォルダーって道具としては優秀なんですけど、精度の問題なのかどれもわずかなガタつきが出ちゃって趣味性や2nd coolを重視するいわゆる”ナイフ好き”には好まれない傾向があって知名度が低いんじゃないでしょうかね。迷彩ハンドルに黒ブレードとかかっこいいと思うんですけどね。う~ん、パフォーマンスは良い分なんかもったいない。
ま、いろいろ言ってもこいつはアシストなんで現在の国内入手性はかなり悪いです泣。
スパイダルコ マニックス2LW・ネイティヴ5LW
マニックス 3.37”ブレード、82g、鋼材CTS-BD1/CPM S110V
ネイティヴ 2.95”ブレード、70g、鋼材CPM S35VN
こいつらの名前のLWは詐欺じゃないです。マニックスのデザインはサルの息子エリック、ネイティブはどっちだっけ、忘れた苦笑。こいつらはライナーレス軽量化戦争を始めたA級戦犯です。マニックスがエンデューラの競合、ネイティブがデリカの競合です。スペック上、ネイティヴがデリカより重いのは興味深いです。残念ながら、ネイティヴは手元にありませんので現段階で詳しい理由はまだわかりません。一般的にブレード幅がある方が重くなりますがネイティヴもマニックスもこれだけのブレード幅でこれだけ軽いのは頑張ったと思います。マニックスの方はナイフ業界で初めてS110V採用の量産モデルだったり新開発のハンドル材投入であったりボールベアリングロック採用でいろいろ面白いことやってます。エンデューラ・デリカはG・サカイ製ですが、こいつらはコロラド州ゴールデンのスパイダルコ本社工場生産で、グラインド等の精度はG・サカイ製よりちょい上です。BD1を除けば鋼材も値段もちょい上です。あくまでもエンデューラ・デリカの上位モデルという扱いなんでしょうね。推測ですが、ネイティヴはもしかしたらサムホールがハンドルに埋もれ気味でちょっと開けにくいかもしれません。エンデューラ・デリカと同じように、派生モデル、スプリントランも多数です。
コールドスチール ブロークンスカル
4”ブレード、88g、鋼材CTS-XHP
最強クレイジースペック。スパイダルコが軽量化で攻めてったらコールドスチールが本気で殴り返しました笑。ブロークンスカル、壊れた頭蓋骨って名前はドンピシャで4”ブレードで重量3ozって時点で頭のネジ3本ぐらいぶっ飛んでます。6色展開ってあたり、明らかにエンデューラを意識してます(笑)。G10ハンドルでここまで軽くできるとは正直思いませんでした。それでいてトライアッドロックのお墨付き。高級鋼材を採用していながら諭吉さんくらいの値段です。こんな狂ったスペックのナイフを誰がデザインしたんだよ!!スティーヴ・オースティンさん、あの総合格闘家です(笑)。いやあ、おっかねえ(笑)。使ってて気になる点をいくつか申し上げますと、クリップの反り返りが小さくて厚い生地には挟みにくいってのと、コルスチあるあるのハンドルのトラクション良すぎてクリップの下をヤスリでちょっとだけ滑らかに削んなきゃいけない奴です。あとはジンピングとランヤードホールあったら嬉しいなあ。それとサムホールが良かったなあ(好み)。
What ever you say, Stone Cold Steve Austin. リック・サンチェズの言う通りだわ笑。
はい、これはエンデューラキラーです。
ベンチメイド バグアウト
3.25”ブレード、52g、鋼材CPM S30V
デリカを迎撃するためにベンチメイドが送り込んだ刺客。FRNハンドルにアクシスロック、最低限に切り詰めたライナー。こいつ、見るからに同クラスを皆殺しにして食い散らかす気満々です(笑)。ちょっと興味深いのは3”クラスには珍しい3”チョイ越えの刃渡り。普通は刃渡り3”規制の地域でEDCするために3”チョイ下にするんですけどこれはEDCとかを無視してるんですかね?バグアウトって名前からしてアウトドアユースを主眼に置いてるのかもしれませんし3.5”クラスで比べろってことなのかもしれません。う~んちょっと買って使ってみないとわかんないです。このレビューを書いている時点では発売して日が浅くて情報が少なく、手元にもないのでまだ詳細はわかりませんが、3インチクラスのブロークンスカル的存在になる可能性が高いと思います。フォルダーの軽量化戦争の激化は筆者にとっては楽しくなるばっかりです(笑)。これいくらするかな~、ちょっと高そう。
うん、でもこれは欲しいぞ!!
その他
エンデューラ・デリカの幅広い用途を網羅して完全にマッチするのはこれくらいかと思いますが、用途を限定していけば他にもパラミリ2・パラ3とか940とか本当にたくさんのモデルが競合モデルとして他にも上がると思います。エンデューラ、デリカは非常に汎用性のあるナイフです。それは軽さと実用性を両立している故に組み込める装備システムが多いからです。同じくらいの汎用性を満たすナイフって言うとたくさんあるわけではありませんのでこれくらいにしておきますが、用途を絞って想定する装備システムが決まっているのならば競合モデルになりうるナイフは各ジャンルにいくらでもいます。また、2nd coolを重視するなら、、、いや、それならそもそもエンデューラやデリカは選ばないな苦笑。
まとめ
現代の実用フォルダー、全てはC01ワーカーから始まり、エンデューラとデリカで煮詰められて世界に広まりました。それは1st coolの視点に立った時の完成度の高さ故にベンチマークなのです。2nd coolの視点に立てば意味が無いように思える設計もすべては実用性、機能性、信頼性、1st coolのためと考えれば納得できます。
面白味の無さ故におそらくナイフが趣味である人ほど敬遠するであろうナイフ。
ナイフなんか全く興味なくて仕方なく道具として使ってる人の方がエンデューラ・デリカを高く評価するのではないかと思います。
さて、競合モデルがどんどん進化して来ましたよ、スパイダルコさん。そろそろ第5世代を開発して逆襲する時が来たんじゃないですか??
独断と偏見に基づく総合評価:90/100
※大人の事情による但し書き
銃刀法、軽犯罪法は守りましょう。
エンデューラ・デリカをEDCする場合は正当な理由が必要です。
今回もこんなに長い文章読んでいただきありがとうございました!
なんかアマゾンだとちょっと割高感あるなあ。。。多分ナチュラムあたりのほうがやすいんじゃないですかね?でもテキトーにモーラ↓でも買ってっていただけるとサイト運営には助かります。