モーラ コンパニオン レビュー

フルタングなんて糞食らえJun.2,2018


この記事はBladeHQより画像提供の協力を得て書かれています。ご協力ありがとうございます。

本日もAGECにアクセスしていただきありがとうございます。サイト管理人の友人Sです。なんか今までのレビューを読み返してみると文章が硬くて読みにくいのが多かった気がします。書くのにのめり込むほど文章が硬くなるのどうにかならないかなあ。。。

今回は早めに本題に入るとしましょう。最後まで読む暇がない人のために先に結論言いますと、とりあえずこれ買ってください↓。

アマゾンでたったの2000。しかも優秀です。持ってて損なし。迷う余地はありません。
持ってる人ももう一本くらい別の色で買い足しましょう笑。

巷ではこのナイフはコスパの高さが騒がれてます。

もちろんコスパは半端ないです。

でも、それとともに筆者が個人的に注目したのは重さです。

4インチブレード116g

え?!嘘っしょ!!フォルダー並み?!

しかもこれ、シース込みの重量です

ちなみに、フォルダーと比べてみると、

・エンデューラ4FFG 3.75’ 95g
・グリップティリアン 3.5’ 110g
・バック110 4’ 218g

グリップティリアンとほぼ同じ!

なんなんだこのバケモン。。。。

最初コスパに目が行って気付かなかったが、じっくり向き合ってみるとこれ実は恐ろしくハードコアなユーザーを意識して設計されたんじゃねえのか?
それとも単純にコスト削減の結果?

どちらにせよ、軽量化の意図がなければそこまで軽くはならなかったでしょう。それで¥2000なんですから感動もんです。
設計者に敬礼!

何度も何度も繰り返し書きますが、軽さは正義です。

軽ければ身軽になります。身軽になれば、より速く走れるし、より長く歩けるし、咄嗟の危険も回避しやすいです。持久戦での消耗も減らせるので長時間の行動でも凡ミスを減らすことにつながります。

システムの総重量が軽ければ行動スピードが上がって危険な領域の滞在時間が減って安全につながります。特に装備重量が嵩むハードな人力移動の用途では軽くて高性能じゃないと使い物になりません。

↓例えば、この北アルプスの超有名ポイント。数百メートル切れ落ちた崖に削られた道が何キロも続いています。登山が好きな人ならここを通ったことがある人もいるかと思います。ワイヤーの手すりがあるだけで落下防止柵などは無く、足を滑らせれば即あの世行き。実際に筆者の会の人も数年前にこの付近で亡くなっています。万が一バランスを崩した時にグッと耐えて踏みとどまれるか。軽量化はそういうところで効いてきます。

ここまで軽いのは、あえてフルタングを避けてナロータングを採用したことと、そしてシースをFRNの一体成型にしたことことが理由でしょう。

モーラはフルタングじゃない!

って批判するやつはナイフの見方が間違っています。

システムの視点から考えればフルタングの強度はいらないけどフィクストの信頼性とフォルダーの軽さが要求される場面はたくさんあります。モーラはそういうフォルダーとフルタングのフィクストの間を突いている素晴らしいナイフなのです。これをフルタングの頑丈なフィクストブレードと直接比較して批判している時点で見方が間違っていると思います。

ナロータングの良さを最大限に引き出している

自分なりにまっすぐモーラを見つめるとどうしてもこの結論が導き出されます。

そんなことを全く考えずにフルタング万歳と叫ぶ群衆のためにモーラはガーバーグを発売するオチ。ラインナップの穴を埋める点で意味はありますが、あのボッタクリ価格を提示されたらガーバーグすごい!ってフルタングの優位性を植え付けられてしまいますよね。なかなか上手いマーケティングです。はっきり言って用途と装備システム次第ですのでどっちが優れてるとかいう話ではありません。詳細は関連記事参照↓

フルタングの考察

2016.12.08

スペック

MORA Companion

全長:約218㎜

刃渡り:約99㎜

刃厚:約2.5㎜

ハンドル厚:約20.5㎜

重量:83g(ナイフのみ)、116g(シース込み)

鋼材:12C27(HRC56-58)・UHB-20C(HRc58-60)

グラインド:セイバーグラインド

ハンドル材:TPEラバー

シース:FRN


サイズは4インチクラスです。えっと、何度も言いますが超軽量です。

用途

プーッコのデザインが映し出された北欧スウェーデンのナイフですから、まずはブッシュクラフト!ってなるんですかね。

筆者はブッシュクラフターじゃないですし、ブッシュクラフトに詳しくもありません。でも個人的なブッシュクラフトのイメージは

装備を最低限に削りに削り、自然のフィールドで得られる資源だけでどれだけ生活を成立させられるかを究めるエクストリームスポーツ

です。ストイックなほどの非物質主義の体現。そういうわけでブッシュクラフトガチ勢はかなりヤバい人たちだと勝手に思い込んでます笑。

武器、食器、その他道具類 → 自然物から作成

テント → 自然物でシェルター作成

火 → 自然物オンリーで着火

まだポカポカ陽気の夏とかならわかりますけど、例えば-20℃の真冬の森の中でブッシュクラフトとかは考えただけで頭おかしいでしょ!

そういう筆者の偏見と差別のせいで筆者の頭の中ではフェザースティック()がスイーツ()と同類に見えてくるんですけどね笑(あぁーこんなこと言うといろんな人にぶっ殺される)

それでも考えてみれば大昔の人間はみんなそうやって生きていたわけで文明との引き換えに人間がどれだけ弱っちい生き物になっちゃったことか。

話を戻しまして、筋金入りのブッシュクラフター達はナイフを使い倒します。(一定のレベル以上になるとナイフも黒曜石などの自然物だけで作り始めるんですかね。。。?)

なのでナイフに関しても彼らなりの独特な趣向があります。例えばスキャンディグラインド。これは一般的なアウトドアユーザーでもかなり好みが分かれますよね。

まあ、筆者はブッシュクラフターじゃないのでそっちの話は置いとくとして、いつもの感じで用途を見ていくとコンパニオンはかなり守備範囲が広いです。なによりもこの価格はやっぱり強いです。本サイトを閲覧していただいている方は関係ないと思いますが、世の中のほぼ全ての人がナイフに興味ありません。ナイフに興味がない人はナイフにお金をかけません。お金はかけたくないけどハードに実用するユーザーにこそモーラはオススメです。

まずは兵隊さんがLBEにつけるタクティカルナイフ。ピカピカしてるブレードが嫌な人のためにオールブラックバージョンも発売されています。武器としてはもうちょっとハンドルやポイントのデザインが、、とかはあるかもしれませんが、タクティカルナイフなんて用途はほぼ身の回りの雑用だからユーティリティ性があるのは良いことですし、最後の切り札の武器としては十分機能するでしょう。むしろ兵隊さんの担いでる重量をかんがえればフィクストでこの重量はありがたいです。そして誰かに盗まれても¥2000だからダメージが少ない!

そしてアウトドア全般におけるキャンプナイフ。海水環境をのぞけばほぼどこでもいけるんじゃないでしょうか?

で、バトニングできるか問題。しつこいようですが、バトニングはできるできないではなく、どこまでできるかです。細い枝ならバトニングできますしガンガンぶったたくような使い方をすればナイフが負けます。繰り返しになるのでもっかい関連記事貼ってここでは省略します。今ので納得できない人はこちらを読んでみて下さい↓

フルタングの考察

2016.12.08

個人的には積雪期が特にお勧めだったりします。積雪期は寒さ対策、雪対策、カロリー消費アップと装備重量が嵩んでくるので軽量化が重要になります。特にフォルダーは凍結リスクが出てくるうえ、グローブを着けているのに加えて指先がかじかんでいると操作性の問題もあります。

また、装備システムの観点から考えても、森林限界以下で焚火をする前提のシステムならば長物と鋸がセットですのでキャンプナイフは絶対的な強度が無くても長物がカバーしてくれます。森林限界を超えれば最大の相棒はナイフではなくピッケルです。木が無けりゃバトニングやチョッピングなんて無関係な世界になるのでナイフの強度なんて大して必要じゃありません。まあ、実際のところ、積雪期登山ではコンパニオンはちと大きすぎで携帯方法の問題もありますが、エルドリスなんかはかなりポテンシャルがあると思います。

あとはBug Out Bag、非常持ち出し袋、サバイバルキットですかね。ここでは特にコスパと軽量化のパンチが効いてきます。この手の装備システムは一回組んだら今週末キャンプで使うからと中身を引っ張り出したりするのは厳禁です。戻さなかったり使用で摩耗していたりすればいざ必要になった時に困るからです。使う日が本当に来るかもわからないのに大金をかけてシステムを組んで、必要なその時まで転がしておくのですからコスパというのはどうしても重要になります。しかもただ安けりゃいいわけでもなく、重要なのはコストではなく最低限の性能を備えたコスパです。

遭難して九死に一生を得たクライマーや戦闘中に敵に撃ち落されて命からがら脱出したパイロットなどの話でもよくあるように、極限状態におけるサバイバルでは全ての装備は消耗品です。そういう場面ではたった¥2000のナイフの価値はかけがえのないものになりますが、大ケガをしたり環境が変化したりと様々な理由で放棄するかの難しい選択が迫られることもあります。そして少しでも状況が有利になるなら容赦なく放棄します。だから無駄に高級な装備は非常時には向かないと思っています。まあ、ナイフは重要装備なのでモーラほどコスパを攻めなくても良いと思いますが、誰もがナイフにそこまで拘りを持っているわけでもありません。そういう人にモーラはオススメです。

ブレード

ブレードはプーッコのデザインが色濃く映し出されています。やや細身でストレートに近いドロップポイント。歴史に証明されたユーティリティ性に優れた形状です。もうそこんとこは特に言うことは無いですよね。

エッジのカーブが緩やかに立ち上がってかなりポイントが尖っています。強度より細かい作業での使いやすさに振ったものだと言いたいところですが、、、皆さんご存知の通りこいつグラインドの立ち上がりがかなりきついです。

この手のナイフでどうしても意見が分かれるのがグラインドですよね。

はっきり言って筆者は好きじゃないです。こんだけグラインド角がきついと食い込みが非常に悪いですから。

ただ、ブッシュクラフターは好んでいます。理由は多分エッジなんじゃないのかなあと推測します。

筆者の使い方だとそんなにエッジに拘ってないんですよ。はっきり言って切れ味85点までいけば満足です。

使用環境の違いってヤツです。

100点まで研いだエッジだとどうしてもフィールドで維持できませんし、レザーストロップ持ってきゃいいじゃんとか言われても微妙なタッチの違いで作業に大きく影響することは無いので装備重量の増加に見合いません。整備性を考慮すればマイクロベベルはあった方がいいですし、エッジのフィーリングよりも総合的なバランスを重視します。単純に装備システムの要求に合致しないのです。

でもエッジに拘るブッシュクラフターがスキャンディグラインドを選ぶのは至極当然だと思います。マイクロベベルが無いのでエッジ角が小さくなるのに加えて引っかかるような違和感も無いですし、食い込んでいっても角度も一定なままなので抵抗の増え方がリニアで感覚を掴めばコントロール性が高いのだと思います。

モーラの話に戻りますと、コストも絡んできます。セイバーグラインドは削る量が少なくで加工コストを低く維持できるってのが大きいと思います。でもエッジのつけ方はいかにも、これはスキャンディグラインドに研ぎ直してねって感じです笑。

ジンピングが無いのもちと残念ですが、ブッシュクラフターの方々はジンピング嫌いな人多いんですよね。それなら無駄なコストをかけない方が良いって判断でしょう。クオリティを求めなければ数分作業すれば簡単に解決できるのでそれほど気にはしてません。

フィニッシュはミラーには程遠いですが、結構ピカピカに磨き上げられています。鋼材が柔らかいのですぐ傷だらけになりますが、水切れが良いのはナイスです。

さて、モーラにはコンパニオンヘビーデューティーなる刃厚を上げたバージョンがありますが、筆者には正直こいつの存在意義がわかりません。なんでブレードを分厚くして食い込み悪くした。タングを考えれば強度アップの恩恵も大して得られない。軽量キャラを自ら潰しにかかってるこいつはなんなのか?真面目にわかりません。

ブッシュクラフターの皆さんの視点だと何かメリットがあるのでしょうか??気になるので是非教えて下さい。コメントで回答していただければ追記でこの下に勝手に突っ込みますので笑。

鋼材

モーラは炭素鋼とステンレスがあります。

炭素鋼の鋼材はUHB-20Cです。みんな大好きな1095とほぼ同じと言えばピーンと来るでしょうか。hRC58~60と言うと1095の割には結構硬めに仕上げてます。カーボンの方が”切ること”に関係する性能は高いと思いますが、筆者は完全にステンレス派です。

理由は簡単でむき出しの炭素鋼を維持できないからです笑。

基本的に筆者がアウトドアでナイフを使う場面ってのは肉体的に疲労しています。人間は疲れると馬鹿になります。バカ対策としてはフィールドではメンテフリーな方が嬉しいです。長物だと炭素鋼でも良いかなって思いますが、4インチクラスだと料理に使ったり水気との接触が多いので炭素鋼だと気付いた頃には大抵真っ赤に錆びてます笑。

炭素鋼には炭素鋼の良さもあるのでブッシュクラフター中心に炭素鋼派もいるかと思います。単純に筆者の使い方ではステンレスの方が向いているというだけなのでそこは好みと用途にあわせて選んでください。

ステンレスの鋼材はサンドビック12C27。よくよく考えればサンドビックはスウェーデンの会社、モーラもスウェーデンの自社工場で生産。なるほど、さすが地産地消です。

使ってみた印象としてはまず柔らかいです。あんまりチップはしませんが、硬い物にぶち当たるとエッジはいとも簡単に潰れます。硬い物を切らない限りは鋼材の柔らかさの割にはエッジは持つかな??て感じもしますが、もちろんそんなには持ちません。でも研ぎなおすのも一瞬です。耐食性はVG10よりわずかに劣るくらいでかなり良い方ではないでしょうか、と言ってもこのレベルになると表面のフィニッシュの影響も大きいかと思います。濡れたまんまシースに入れて放置しても表面にほ~んの僅かな表面錆びが出るくらいでそれもこすればすぐ取れます。海水環境じゃない限りは何ら問題無いでしょう。

はっきり言います。筆者は鋼材のことはわかりません。

てかこんな人間がナイフレビューをしていいのか、と言う問いが常に自分に突き刺さります。。。

もっと勉強せねば。忙しい、とか言ったところで勉強しようとすれば無理やりでもできたはずなのでやっぱりそこまで興味がわかないんでしょうね苦笑。。。すみません。え~、これは怠惰ってヤツですね。

向上心がない者は馬鹿だ

んぐっ。。。(10ダメージ)←多分今後も変わらない

てなわけでPonkyの先輩(?)のカスタムナイフメーカー、哲学者じゃっく氏こと小嶋大輔さんのありがたいお言葉をいただきました↓

12C27™️鋼はSandvick社製のアイススケートブレード、氷板切削ブレードや寒冷地氷板用ボールミルに使われる冷間脆性の高いピュアステンレススチールです。

炭素量0.52〜0.6%の極めて単純な炭素鋼の組成に13.5〜14%のクロムを持たせた合金になる訳ですが、溶解した精錬時に発生する一次炭化物の発生を抑える意味で先の流行の過共析ステンレス鋼と呼べる炭素量1%にも及ぶ合金鋼に比べ合金同士の遮蔽物や脆性の基点となる析出物が少ない為、鋼自体の硬度とバランスを安定出来る合金と呼べます。

副次的には、炭化物による切断刃の発生が少ない為にバナジウムやモリブデン添加の合金鋼に比べ研ぎ易い炭素鋼とステンレス鋼の丁度中間的な材料とも呼べます。

喩えるなら、少し難しい説明になりますが炭化傾向が高い添加物(クロムを始めバナジウム、モリブデン、チタンやニオブなど)を入れている合金鋼は溶解及び粉末冶金の精錬時及び熱処理時にBal.(地)の鉄より炭素と結合し易い為に炭化物を多く析出します。
粉末鋼が「ザックリとした切れ味」と呼ばれる部分にはこの析出した炭化物から影響します。
炭化物も特に合金硬度を上回る為、別の意味で優秀な切断能力を有しますが、靱性も地の鉄が炭化傾向の高い添加物により炭素を奪われる為、マルテンサイト化が抑えられ、求めたいバランスに絶妙に反比例して行きます。

その炭化物の影響なのですが、上記で触れる場合に5ミクロン以下に抑える事が難しく、金型ダイス鋼規格のSKD-11(D2鋼)などは20ミクロンレベルの炭化物が析出したりします。

その析出物が刃先に露出する事で出る切れ味性能に引っかかる様なフィーリングが説明出来ますが、そのミクロン単位が単純炭素鋼の合金の強度で出した刃先より大きく感じ得る数値なので滑らかな刃先を求める場合、析出物の発生は極力抑える必要があります。

単純炭素鋼に近い合金鋼は析出物を多くし耐摩耗性を高めた合金鋼に比べ、鋼自体の強度を上回る対象に当たった際に急激に切れ味が低下しますが、医療用切開に使われる対象が鋼の硬度を下回る使用が一度の作業のみで想定される様な刃物の刃先にはとても細かく鋭い刃先を得る事が出来ます。

また、頭で触れた“冷間脆性”及び靱性の話ですが、その析出物が合金に亀裂や脆性破壊に至る充分な基点に成り得る為、極力無い方が鋼自体のストレスや衝撃、圧力に対して良好です。(※逆に炭化物の多い金型鋼は柔性及び展性を上げる添加物で回避するので炭化物の硬さと母材のヌルっとした刃付けに違和感を感じる人も多いです。)
また、砥石の硬度を上回る析出物が無い為に硬度を上げても研ぎ易いです。

つまり、単純炭素鋼のフィーリングをステンレススチールで再現しようとした鋼材みたいなモノですが、その中でも特に炭素量をバランス良く添加したのが12C27になります。

面倒な説明を割愛しても長くなりましたが、御一読頂いた方々お付き合い頂きありがとうございました。

すげえ!!さすがプロです。ありがとうございます!

なんか色々すごく納得しました。あのツルっとした切れ味はそういうことだったんですね。てかマジで積雪期向けやん!!

あの~今後のレビューでも是非書いていただけませんか笑??

ブッシュクラフター好みの炭素鋼のフィーリングに近いステンレスをあえて選ぶモーラって実はやっぱり考えてるのか??それともただのコストカット??軽量化の件もそうですがパフォーマンス狙ってやってるのかコストカットでやってるのか。。。。

ハンドル・タング

ハンドルは恐ろしく快適です。何時間も連続で使用し続ける前提で作られている感じがします。はい、ブッシュクラフターって恐ろしいです。

もうちょっとヒルトが大きくても良いのかなとも思いますが、やはりグリップの自由度が優先なのでしょう。

TPEラバーにはちょっと感動しました。普通ラバーって言うとクラトンなんかを思い浮かべるんですけど、トラクションが良い分服の裾などが引っかかったりするんですよね。モーラのラバーはそういうことがないんですよね。もっと固めのコンパウンドを使ってるんだと思います。絶対的なトラクションでは劣りますがすごくバランスを考えたと思います。あと、ブッシュクラフターはあんまりトラクションが効きすぎるハンドル材を好んでいないのかなあとも思います。

ハンドルの長さは筆者にはピッタリでしたが筆者は女性並みに手が小さいので手が大きい人だとちょっと短いのかもしれません。ハンドルが短すぎるナイフが多すぎるって筆者はよく言ってて困惑する人もいると思いますが、だいたいは普通に握った時は大丈夫なんです。ただ、逆向きに握ったりいろんな持ち方をした時にどうしても短く感じるんですよね。

ランヤードホールがありませんが、電ドル使えば一瞬で穴を開けられます。パット見だとタングがハンドル末端のどこまで伸びてるかわかりませんが念のために真ん中を外せば大丈夫でしょう。

タングはナロータングです。恥ずかしながらずっとハーフタングだと思ってましたがデリカ・エンデューラレビューの時に指摘されて初めて知りました。

https://www.natchezss.com/morakniv-companion-fixed-blade-knife-stainless-steel-blade-orange-and-black-rubber-handle-orange-sheath-4-1-blade-and-8-5-overall-length.html

自分でも確認してみようというわけで以前スティップリング記事でも出てきたベーシック511をぶった切ってみました。

これが折れるってどんな使い方をしたんだろう。。。。

そりゃあぶったたけば壊れますけどこのサイズのナイフでする作業とは思えません。強度が必要な人はフルタングのナイフを買いましょう。冒頭でも散々言ったのでここでは省略。

ちなみにタング丸出しのブランクだけでも売ってるみたいです↓。

https://morakniv.se/en/product/knife-blade-blanks/

シース

FRN製の一体成型シース。水を吸わない、ストラップ不要リテンションとカイデックスを含め樹脂シースはとても使いやすいです。色はハンドルとマッチしてます。カラーバリエーションが豊富なのは良いことです。

カイデックスじゃこの軽さ(と価格)は絶対に実現できません。カイデックスって材料としてどうしても比重が大きい上にハトメも使うので重くなるんですよね。剛性も同じ重量なら一体成型には勝てません。カイデックスの重さを嫌ってあえてナイロンシースを使う人もいますし。

ベルトクリップはすごく使いやすいです。着け外しも簡単ですし固定力もバッチリです。強度に関してもめちゃくちゃ頑丈ってわけではありませんが、普通の使い方なら全然大丈夫でしょう。無駄に強化して重量増加するよりはマシです。

ベルトクリップの向きは残念ながら右利き用のみです。左利きの人は残念でした。カラーバリエーションをこれだけ充実させてるんだから左利き用バージョンも作れば良いのにと思います。

ベルトクリップの付け根部分が曲がってちょっと変形した痕がついていますが普通に使っていて壊れることはほぼ無いと思います。故意に何回も折り曲げたりすればさすがに千切れると思いますが通常使用では考えにくいです。

リテンションは弱くて緩すぎな気もしますが、ナイフそのものが軽量なので保持力が弱くてもなんとかなります。もうちょっとしっかりホールドしてくれてた方が嬉しかったけどこれくらいならまあ許せます。上下逆さまの携帯とかは無理です。

でも、もうちょっとリテンションが強ければなあ、と思います。確かにそこを改善しようと思えばカイデックスでも水道管でもレザーでもシースを作り直すことはできます。でも純正シースより軽量に仕上げるのはほぼほぼ無理でしょう。

はっきり言ってこのシースの軽さが無くなるとこのナイフの魅力は半減してしまいます。

やったとしてもハンドルを固定するストラップかゴム紐を追加するくらいで済ませると思います。

シースの連結機能ですが、使いません。シースを連結すれば体の重心から離れてしまいますし引っかかりやすくなります。モデルによって規格が違うみたいですし正直よくわかりません。

競合

一般的にはブッシュクラフト目線で見ていくことが多いと思いますが、筆者はブッシュクラフトわかりません。

なので今回はあえて軽量化のためにフルタングを棄てたナイフを見てみましょう。

まず、言うまでもなくモーラの他モデル。てか下にいくつか競合を紹介してますが、それらよりもモーラの他モデルとの方が迷うかもしれません。でもぶっちゃけ迷ったらとりあえずコンパニオンて感じで全然良いでしょう。

コールドスチール ライトシリーズ

モーラの一番の競合は冷鋼です。それもかなり昔からの強力な競合です。非公式ながら皆に”ライトシリーズ”と呼ばれてるシリーズです。現行モデルの鋼材は4116、シースも競争力を高めるためにナイロンから射出成型にアップグレードしました。

モーラの場合はブッシュクラフトブームっていうマーケティング上の武器があったため国内で圧倒的なシェアを維持できているだけで、実はコールドスチールも同じくらいお勧めです。一点だけ言うとすればカラーバリエーションが少ないのが残念。

  • フィン・ベア
  • カナディアンベルトナイフ
  • ローチベリー
  • ペンドルトンライトハンター
  • アウトドアマンズライト
  • タントーライト
  • ピースメーカーⅡ・Ⅲ

Roach Belly

photo courtesy of Blade HQ

Pendleton Lite Hunter

photo courtesy of Blade HQ

Outdoorsman Lite

photo courtesy of Blade HQ

スパイダルコ

ちょっと意外なメーカーかもしれません。実用性、道具としての性能を究めることが得意なメーカーだからこそ軽量化の強みを理解しています。それはもちろんフィクストでもそうで軽量化のためにあえてフルタングを棄てたナイフを結構前から作り続けていた数少ないメーカーです。

VG10ブレードに樹脂ハンドル、樹脂シース。スパイダルコのボルタロンシースって見た目はカイデックスにそっくりなんですけど重さ測ってみると全然違うんですよね。モーラの軽さをもっと高品質で実現したナイフを求める場合はスパイダルコがオススメです。

  • ビル・モラン(ドロップポイント・アップスウェプト)
  • ストリートビートLW
  • ストリートボウイ

Bill Moran Drop Point

photo courtesy of Blade HQ

Perrin Street Bowie

photo courtesy of Blade HQ

その他

まず、カーショー アンテロープハンター。安くて軽量。これはちゃんと競合だと思います。

Buck Commander Antelope Hunter II & ZipIt Combo Green

photo courtesy of Blade HQ

その他にもコンドルやマーティーニが近い競合として挙げられそうですが、トラディショナル系とニッチが微妙に違うので参考程度にとどめておきます。

Lynx 131 Curly Birch

photo courtesy of Blade HQ

まとめ

これだけ安くて実用的なナイフが簡単に入手できるようになったのはブッシュクラフトブームとグローバリズムの恩恵です。本当に良い時代です。

このナイフが筆者に教えてくれたことは道具ときちんと向き合うことです。じっくり見つめて対話する。そこで生まれるストーリーがレビューであるべきだと思います。レビューが広告になっちゃいけないと思います。アマゾンリンク貼ってるけど。

モーラのナイフは世界中のいろんな人の手に渡っています。守備範囲が広いが故にいろんな人の手で活躍できてその数だけ色んなストーリーがあるのだと思います。

もちろんその中には過酷な使用環境で壊れてしまった個体もたくさんあるでしょう。でもこのナイフが一体どれだけの人をナイフの世界、アウトドアの世界に導いたのでしょうか??そう考えるとこの手元のナイフ一本で世界でたくさんの人が繋がったようにも感じます。即ち、筆者の脳内はお花畑ですね。

独断と偏見にまみれた総合評価

90/100

ABOUTこの記事をかいた人

ストイックに理詰めで装備システムを構築する実用主義者。ponkyがデザイナーならSはエンジニア(B2は中間でバランス良い)。Sからすれば実用性第一で見た目は二の次のようだ。体力はないが、読図やロープワークは超得意。
イギリス生まれなのにアメリカ英語しか使えない日本育ち。