Whatever you say Stone Cold Steve Austin. Mar.20,2018
このサブタイトル、少し前に大ヒットした“Rick and Morty”っていう筆者が大好きなアニメの主人公のセリフなんですけど、このナイフにピッタリですね。初めに言っておきますが、これは100%実用のナイフです。決して趣味ナイフではありません。
https://www.allposters.com.au/-sp/Rick-Morty-Group-posters_i15283786_.htm
Rickと同じくらいぶっ飛んでるナイフです。以前の記事でも書いたように基本的にあんまり最強ナイフって言い方はしたくないんですけど、このナイフだけは敵を作る覚悟で言います。
これ最強だわ。
まあもちろんこの“最強”は筆者の独断と偏見にまみれてるわけですけどね笑。
レビューを書く身としてはレビューを書きやすいものと書きにくいものがあるんですけど、こいつはすっごく書きやすいです。
キャラが濃いとか、極めて優秀であるとか、ストーリーがあるとかいうものは書きやすいんですけど、ブロークンスカルの場合はこれ全部持ってます。言うべきことがスラスラ出てくるんですよね。
道具に語らせる。
これがレビューの本来あるべき姿なのかもしれません。
すいません、今回も前置きが長くなりました、というか多分まだしばらく続きます。サイト管理人の友人Sです。今日もAGECアウトドアにアクセスしていただきありがとうございます。今回紹介するコールドスチールのブロークンスカルですが、これがどうすごいか。バイクに興味ない方には申し訳ないんですけど、一言で言いますと、
レーサーレプリカ
です。バイクに興味が無い方もいるだろうので軽く説明しますと、速いことは正義とばかりに各社が競ってアホみたいにパワーのあるバイクが量産されてた時代があったんですよ。“スーパースポーツ”って言葉がでる前の時代です。国内では行政指導自主規制があったとはいえリッター180馬力、海外仕様はリッター250馬力の世界でしたからねえ。次から次へとどんどん過激なバイクが世の中に溢れ、それを消費者が好んで選択する。いろんな意味で狂ってた時代でした。
そーいやコールドスチールってバイク界でいえばカワサキ笑?!
さて、フォールディングナイフの話に戻すと現在は実用フォルダーを中心にまるでレプリカブームの時のような軽量化戦争の真っただ中です。軽いことは良いことです。装備重量を減らすことは快適性のみならず、安全にもつながりますし、山から海まで、果ては特殊部隊の兵隊さんまで、どのような分野においても難易度の高い目的を達成するには重要な武器になります。装備の重さに足を引っ張られては困るような、難しい目標の実現に一歩近づけてくれるわけです。
軽いのはやすっちい。重量感がある方が高級そう。
未だにこんなこと言ってる不届き者は最低でも20㎏の荷物を担いで長距離歩いてみることだ!それに、重く設計するのは簡単ですが軽くするのはやはり技術が必要です。(実用という観点に立てば軽さは正義ですが、趣味となれば別に重いナイフを否定するつもりはありませんので皆さん怒らないでください笑)
本格的な作業にも対応しやすい3.5インチクラス以上のフォルダーに限って考えてみましょう。今まで、軽量実用フォルダー、パフォーマンスを重視しながら本気で軽量化したい人のためのフォルダーと言えば選択肢はそれほど多くはありませんでした。
3.75インチブレード、3.35oz(第4世代)
3.00oz(第3世代)
元祖現代実用フォルダーですね。特に先代の第3世代はライナーレスの恩恵を受けて軽量で現行ではパシフィックソルトが先代の構造を継承しています。ただ、ライナーレス化のための技術もまだまだだったのかガタツキの問題もあり、当時はFFGのオプションもありませんでした。というわけで使い勝手は現行の方が良かったりするわけです。
SOG AEGIS
3.5インチブレード、3.14oz
実用軽量フォルダーの隠れたドン。道具としては超優秀です。かなり長い間、軽量化を攻めたい人たちのナンバー1の選択肢でした。
まあ、行政圧力かけられて今では国内入手性は悲惨なんですけどね
政治的な汚い愚痴に行く前に次に行こう苦笑。
用途を絞っていけば、他にも細くすれば軽くなるとばかりにベンチメイド940とかアルマーイーグル/イーグルHD(モキしまふくろうOEM)とかが超軽量フォルダーとしてあります。特にアルマーイーグルあたりになってくるとクラス最軽量です。
そんなこんなでみんな平和に仲良くやっていたのですが、、、、
蜘蛛さんがケンカを吹っ掛けました。
スパイダルコ マニックス2LW
3.37インチブレード、2.89oz 怒涛の2oz台突入
はい、ストップ。
もうこれなんだよ、これ。これがホントダメ。消費者に軽量化の素晴らしさを気付かせてしまったんです。てか、この半透明のハンドルでライナーが無いのを透かして見せてるのがまたいやらしい笑。
あれ?刃渡り短くね?ってなるかもしれませんが、こいつは幅に振ってるんです。なので長さの割にデカくて個人的には3.5インチクラスの位置づけです。第3世代エンデューラの時のライナーレスの問題を解決して殴りこんできたんです。それもいつものFRNではなく新採用のポリマーFRCPを引っ提げて殴りこんできた当たりから蜘蛛さんの本気度が伺えます。
さて、蜘蛛さん人気が出てきたところさらに挑発します。
業界初!CPM-S110Vを量産モデルで採用!
S110Vってのは加工が大変で基本的にカスタムや限定モデルでしか採用されなかった高級鋼材です。それをマニックスに採用しました。
最初は所詮CTS-BD1のエントリーモデルでしょ?、、、って思ってた人もこれで振り向くわけです。
そうです蜘蛛さんは本気なんです。
そこからライナーレス化したネイティヴを投入したり、今までのベストセラーモデルを“○○ライトウェイト”って詐欺改名したりって軽量を推し進めていくことになりました。
というわけで軽量実用フォルダーと言えばずっとスパイダルコの独壇場だったわけですが、この市場が美味しいとわかった途端に本気で殴り返したメーカーが2社ほどいます。しかも、軽量化を攻めてくと強度なんかが犠牲になることが多いわけですが、こいつらの場合はもともと重量級のえげつない強度のナイフを作っていたので軽量化しても過剰とも言える強度を維持してるのです。いや、強度というよりは耐久性と言った方が正しいかもしれません。
ひとつはベンチメイド バグアウト、こいつはまた機会があればその時また書きましょう。
もう片方は今回の主役コールドスチール ブロークンスカルです。
そうです。奴らは本気で殴り返したんです。
なわけでとりあえずスペック。
スペック
Cold Steel Broken Skull 全長:238㎜ 刃渡り:105㎜ 重量:88g 刃厚:3.4㎜ ハンドル厚:9㎜ 鋼材:CTS-XHP グラインド:フルホローグラインド コーティング:DLC ハンドル材:G10 ロック:Tri Ad Lock
4.13インチブレード、3.10oz
はい、もう狂ってます。SI単位系で言いなおしますと、10㎝越えのブレードでいながら90g切ってるんです。最強クレイジースペックです。
普通は軽量化のハンデになりがちなG10を採用、ロックはトライアッドのお墨付きです。軽いのに強いんです。パワーウェイトレイシオがすごいことになってます。
さらにCTS-XHPのような高級鋼材を使用していながらお値段諭吉さん一人分ってのもコスパ優秀です。
特にコールドスチールの意地が見られるのはグラインドです。パッと見FFGっぽく見えますが、これ、ホロウグラインドです。FFG(full flat grind)は食い込みが良いって以外にも、軽量化の面で見ても割と有利なんですけどそのさらに上を攻めるフルホロウグラインドを採用。てかそれで何g減らせたんだよ笑!
もう力づくです。
うん、とんでもないナイフだ。これデザインしたのどうせアンドリュー・デムコだろ??ここまでクレイジーな攻め方するのは彼くらいでは無いかと。
用途
エンデューラ4FFGと同じでバランスが取れていて使いやすく、軽いので様々なシステムに組み込めます。何度でも書きます。装備は個々の装備品が相互に影響しあって全体で一つのシステムとして機能します。当たり前ですが、ナイフを使うために活動するわけではありません。フォールディングナイフなんて所詮は脇役装備で仕方なく使ってるだけなんです。だってフィクスストじゃなくてフォルダー選んでる時点で携帯性優先で実用性は妥協してますよね?だから特に人力移動のシステムでは、あるナイフがどの用途に使えるかどうかは重さで決まってしまう部分が大きいです。どんなに高機能でも重すぎれば荷物に入れられません。ブロークンスカルはそういう目線で見ると恐ろしくハイスペックなのです。
4インチクラスなので料理などで積極的にフォルダーを実用する用途に向いています。ただ、こいつの場合は強度が高いので例えば雪山だったり岩稜地帯の縦走だったり、システムの制約上フィクストは持ち込めないけど保険として緊急時にはシェルター作成や軽い薪処理といったややハードな使い方ができるといいなって場合に非常に強い武器になります。これが他の軽量フォルダーと大きく違うところかと思います。
筆者はこいつを頻繁にEDCしていますが、4インチクラスなのでEDCには大きいと感じる人は多いと思います。どっちかというとかなり優秀なタクティカルフォルダーです。サイズもあるしハンドルのトラクションもしっかりしています。超軽量で目立ちにくいカラーバリエーションもあるので兵隊さんにもかなりお勧めです。現代の兵隊さんのナイフなんて武器としてはバックアップのバックアップくらい?どっちかというと汎用道具として使われる場面の方が遥かに多いでしょう。
普段使いからあらゆるジャンルのアウトドアまでほぼ何でも対応する実用フォルダーです。4インチのブレードなので積極的にフォルダーを使う用途で有効です。特にシステム上の制約が非常に大きいけどハードに使える大きいフォルダーが欲しいって時は唯一の選択肢でしょう。
エンデューラ同様、癖が無く、普通に使いやすいです。ただ、完全に実用に振っているので趣味性なんかは無いです。面白味は無いです。
Steve Austinとのコラボですが、それで価値が上がるってことは多分無いでしょう。。。それにしても著名人とコラボしているナイフなんてのも珍しいです。ナイフと著名人と言うとアンジェリーナジョリーなんかがナイフ好きで有名ですね。
ブレード
まず、なんといってもこのクラシカルなクリップポイントが特徴的です。ブロークンスカルは“ハイテク”なナイフですが、今風なモディファイドクリップなどではなく、まるで“古き良きアメリカ”の人が持ち歩いてそうなポケットナイフを彷彿とさせるシェイプ。テキサス育ちのSteve Austinらしさを上手く演出している気がします。彼のサインがブレードに刻印されてたらなかなかカッコよかったと思います。
ストレートエッジが先端付近でカーブになって立ち上がり、尖ったポイントに。昔ながらのクリップポイントですからその実用性は歴史が証明しています。他のフォルダーと比べてストレートエッジが長くてカーブエッジの立ち上がりがややきつめなので最初は多少違和感がありましたが慣れればとても使いやすくて文句無しです。
ポイントの細さはパーフェクトです。適度な薄さで細かい作業がしやすいです。エンデューラ同様、コンクリートに落としたらポイントはバイバイするかもしれないのでご注意ください。
グラインドは、フルホロウグラインド。で、正直に言いますと、何も考えずに使うと使用感はFFGと変わりません。注意深く気にして使えば違いは感じます。まあ、ホロウなので最初の食いつきは非常に良いです。深く食い込むにつれて抵抗の出方の立ち上がりが強いとかまあ、その辺はホロウグラインドです。ただ、フルホロウともなるとFFGと比べても形状的な差は非常に少ないので使用感はセミホロウよりもFFGに近いです。
なるほど、FFGじゃなくてフルホロウグラインドの採用でブレードをわずかに軽量化したのか。最初はそう思ったんですけど冷鋼のフォルダーってそういやホロウグラインドばっかだったなあ。てことは最初からFFGなんて選択肢はなくてフルホロウの採用で結果的に軽くなった?!なんてことも思うのですがその辺はもっと深く考えられてるでしょう。FFGよりも軽くなるといってもそれはほんのわずかな量ですし。ホロウなら巨大なホイール状のグラインダーで左右2回削るだけなのでFFGよりも安く作れますし、結果的にフルホロウは軽量フォルダーを量産するにはいろんな意味で最初からベストな選択だったのでしょう。
コーティングはDLCです。コールドスチールは長いことテフロンコーティングを採用していましたが、フォルダーのラインナップを現行世代にモデルチェンジをしてからDLCコーティングに切り替えて大幅に耐久性が上がってます。1年以上使っていますがまだほとんど摩耗していません。テフロンだったころは使っていればコーティングが良い感じにはがれてボバ・フェット的なカッコよさが出てそれはそれで良かったのですが。
鋼材はCTS-XHPです。鋼材も現行世代への転換時で大幅にアップグレードしました。広く使われている鋼材なので皆さんご存知かと思いますが、非常に優れた高級鋼材です。S30Vなんかと肩を並べるくらいでは無いでしょうか?XHPを採用したナイフをこれしか所有していないので粘りなどの細かい性格まではまだまだ分かり切っていませんが、切れ味は割と持続します。耐食性に関しては悪くない気がしますが、DLCコーティングのせいもあってその辺はまだ把握できていません。ただ、今のところ、文句は無くてフォルダー用途にはとても優秀だと思います。
ブレードにジンピングは無し泣。サムスタッドはお馴染みのスクリュータイプ。滑りにくく、問題なく片手操作できます。取り外し可能なのかな?サムスタッドはサムホールなどと比べると必要な体積が少ないのでブレードを無駄に大きくせずに済みます。フリッパーなどもありますがここは好みの問題で、ちなみに筆者はサムホール派です。サムスタッドだけコーティングの摩耗が多いのでDLCではないと思われます。
ブレードはジンピングあったら嬉しいなあって思う程度でほぼパーフェクトです。
ハンドル
6色展開してくれてありがとうございます!!それに黒が無しとは最高ではないか!世の中には黒いナイフが多すぎるのだ!
https://x-gear.com.ua/product/cold-steel-broken-skull-i-54sbor-cts-xhp-orange
まあ、このカラーバリエーションからして明らかにエンデューラ4FFGを意識しています。本気でスパイダルコを殴り返すつもりなのでしょう。ポップなカラーからODやタンまで、一般人、女性、アウトドアユーザー、兵隊さん、様々な用途に広く対応できる選択肢を用意してくれたのはナイスです。コールドスチールからすれば本当にいろんな人に使ってほしいナイフなのでしょう。
ハンドルはもっと軽く作ることはできたはずです。仮にFRNなどの射出成型系のハンドルで極限まで軽量化を攻めれば2oz台も実現できたでしょう。それはそれでかなり魅力的な構想ではありますが、そういうことは蜘蛛さんがやることであって、コールドスチールはそうしませんでした。その結果、ブロークンスカルはライナーレスハンドルの中では飛びぬけて剛性と強度が高くなっています。それがより多くのシステムに対応できるキャパの広さを産んだのです。※この辺の詳しい話は別の記事でまとめてあります。
これは別に今始まったことではなく、コールドスチールのフォルダーは前世代のトライアッドロック採用への転換時にG10ハンドルモデルはライナーレス化しています。衝撃を受けたときにハンドルがたわんでショックを吸収して負荷をリニアにするなんて説もあるのですが、その辺はよくわかりません。個人的にテストしたわけではないので。ただ、軽量化につながったことは確かです。それでも決して軽量とはいえる重さではありませんでしたが、先代のウルトラロック(アクシス)世代よりもマシで道具としては正しい進化です。それを考えるとブロークンスカルの軽さはコールドスチールの本気度が伺えます。
話が長くなりましたが、ライナーを取っ払うとハンドルの横方向の強度が落ちます。コールドスチールはどうやって剛性や強度を維持しているのでしょうか?もちろん、ハンドル材のG10がそもそもFRN等と比べて強度や剛性が高いのはあります。でも鍵となるのはバックスペーサーです。これも昔からですが、コールドスチールはあえて金属製(多分ジュラルミン系?)のバックスペーサーを採用しているのです。ロックバーからバックスペーサーにかけてをひとつの芯材としてG10スケールで挟み込んでいます。何も考えずに下手にライナーを採用するよりも効率的に剛性と強度を確保できます。さらにはバックスペーサーを固定するスクリューも貫通させずに左右で互い違いにしているのも剛性向上のためでしょう。こう見直してみるとよく考えられてるな、と感心します。
G10ハンドル、金属製バックスペーサーと重量増のダブルパンチですが、得られる効果は重さに見合っていますし、そのあたりを妥協しないのがコールドスチールらしいです。というか何より、この強度でこの重さにまとめているのがすごいです。設計思想としてはライナー有の強度と剛性をライナー無しの重さで目指すみたいなとこがあったのでしょう。
さて、ハンドルのエルゴノミクスを見てみましょう。ハンドルは癖が無いニュートラルな形で持ち方を制限されず、どう握っても快適です。G10スケールの角の面取りもしっかりされていて痛くありません。4インチクラスのフォルダーなので長さもしっかりあります。浅いフィンガーグルーヴはナイフを握るときに操作性向上に多少は役に立ちますが、まあ無くてもそんな変わらないでしょう。フィンガーグルーヴがハンドルを大きく感じさせる効果がどうのこうのは今回はそれほど関係ないでしょう。ちょっと薄めですが、快適なハンドルで普通に使いやすいです。
サムスタッド周りのクリアランスも問題なし。親指でしっかりアクセスできてオープンに支障はありません。
で、ジンピング。
これはジンピングでは無いぞ。俺は認めぬ!位置はちょうど親指が当たるところですが、G10スケールにへこみがあるだけでロックバーは削られてないので食いつきません。ただ、ロックバーを削ると強度を維持できないので仕方ないのでしょう。スパイダルコのジンピングみたいな細かい刻み目をロックバーやブレードに入れてれば良かったのでしょう。残念です。でもG10スケールのトラクションがしっかりあって、操作性で劣るとしても滑ることはないので〇ということにしましょう。これはタクティカルフォルダーとしても大切なところです。
クリップは最近流行っているやや小ぶりなサイズです。ここ数年であえて短いクリップを採用するナイフは増えてきました。軽量化にもつながりますし、ポケットに挿していても外から目立ちにくく、ハンドルの握り心地に与える影響も小さいとメリットは多いと思います。クリップはティップアップオンリー、って言っても世のナイフ好きの大多数がティップアップ派なのではないのでしょうか?クリップが左右で違うので左用クリップも付属してきます。なんでコルスチが左右非対称クリップにこだわり続けるかは大いなる謎です。特にメリットも無いと思います。かなりディープキャリーなクリップ配置でポケットからの突出量はわずか12㎜ほどとエンデューラの半分強です。ベリーグッド。
クリップの問題点としては反りが小さいので分厚い生地のズボンで使いにくいことです。使ってるうちに慣れたのかクリップが少し緩んだのか多少はマシになりましたが、エンデューラなんかと比べると分厚い生地に挟みにくいのは変わらず、分厚いカーゴパンツなんかだと両手をつかわないといけないこともしばしばです。また、ハンドルのトラクションが大きいので、クリップの下に来る部分をヤスリでかるく削るかなんかして滑らかにしないと抜き差ししにくく、ズボンの生地を摩耗してしまいます。クリップは改善の余地有り。
残念ながら、ランヤードホールは無し。ただ、結構スペース的にぎちぎちに詰まっていて単純にスペースを確保できなかったという可能性も大いに考えられます。
また、ライナー無しのG10スケールでバックスペーサーを挟み込んだ構造のハンドルなのでFRNハンドルなどと比べて薄くて携帯性が高いです。厚さは1㎝を切っています。薄い、軽い、と4インチクラスの中では携帯性は非常に高いです。
ちなみに、ロックバーとクリップはDLCではなく、テフロンコーティングです。けっこうすぐ剥がれます。こんなところでコストカットが苦笑。この際、クリップのコーティングをはがして磨いちゃうのも面白いかもしれません。
ロック
ロックの細かい話に入る前にブレードセンタリング。はい、筆者の個体はズレてます泣。ほかの個体は知りませんが、持ってる方いらっしゃいましたら是非ツイッター経由かなんかで教えてください。まあ、値段考えればしゃあないですね。ハンドルに擦ってるわけではないので実用上問題は全くなし。コスパの高い実用モデルなので許します。
アクションはまあ良いね、くらいです。ロックバーでテンションがかかっていて一般的なバックロックくらいの重さですが、動きはスムーズなので一応親指だけでオープンは可能です。ロックバックのテンションのかかり方はバッチリなのでブレードリテンションは文句無しです。
で、ロックの話ですが、まあコールドスチールなんで言わなくてもわかりますよね。アンドリュー・デムコ氏のトライアッドロックです。改良型ロックバックです。で、普通のバックロックと何が違うのか。
まず、バックロックの特徴。とにかく縦方向の破壊強度が高い。ロックの接触面が変形しても深く噛みこむ構造ではないのでガタツキが発生しやすい。閉じる動作が片手だとどうしても2ステップになる。閉じる時はロックバーを握りこむだけなので分厚いグローブをはめていても操作しやすい。そんなところでしょうか。トライアッドロックはこのガタツキ問題に取り組んで開発されたロックです。構造を見てみましょう。
まず、一番大きな特徴はストップピンです。ブレードから衝撃が伝わったとき、ストップピンが衝撃をハンドルに受け流してロックバーに伝わる衝撃を緩和します。ロックバックのガタツキの原因は衝撃によるロックバーの接触面の変形ですから、大きなステップアップです。ただ、これでは衝撃を緩和するだけで十分な衝撃が伝わればガタツキは生じます。ロックバーのストップピンとの接触面を見ると角度がついています。ロックバーをタングとストップピンに挟み込む構造にすることによって摩耗したときに摩耗した分だけ深く噛みこむような構造にしているのです。そのためにロックバーのロッカーピンも前後方向に緩く動くようになっていますし、ロックバーとタングの間に摩耗した時に深く噛みこむ分を考慮したクリアランスが設けられています。
ただ、ガタツキを完全に防げるわけではなく、ロックバーとタングの接触面は広い面です。縦横に広い面なので少しの変形がガタツキにつながることがあります。また、過負荷時は不意にブレードが畳まないようにロックバーが深く噛みこむ方向に接触面にわずかな角度がつけられています。コールドスチールは完全なガタツキ防止よりも耐衝撃性や安全性を優先した設計にしています。ナイフとしての趣味性よりも道具としての実用性を優先しているわけです。この辺り、非常にコールドスチールらしいです。
強度はロックバーやタングの形状や寸法で決まる部分が大きいので、普通のロックバックとそれほど変わらないと思いますが、耐衝撃性が大幅に上がっているでしょう。公式テスト動画の耐衝撃テストは多分他モデルと同じですが、重りをぶら下げる強度テストではピボットから4インチで重さ125lbと控えめです。まあ、控えめと言ってもコールドスチールとしては控えめなだけでほとんどのロックはここまで耐えられませんが笑。言い方を変えれば今までの強度偏重型から一転して強度と軽さの実用的なバランスが取れたとも言えます。構造的に十分な負荷がかかればガタツキがでるといっても耐衝撃性が高くてちょっとやそっとじゃガタツキが出ないのです。恐らく、長期使用ではわずかなガタツキは出るのではないかと思いますが、その辺はまだ未検証です。
トライアッドロックの解除が重いという人もいるようですが、筆者自身は重いと感じたことはありません。クライミングをしているので普通の人よりも指の力が強いからかもしれませんが。トライアッドロックはクリアランスが多めに取ってあるので一般的なロックバックよりも2~3倍くらい深く握らないと解除できません↓。ロックバーは背ばねのテンションがかかっていますが、バネに加える力とバネの変形量は比例しますから、恐らく解除の時の最後の数㎜の握り込みが特にきついのではないかと予想します。ちょっとこの辺はPonkyやB2の意見も聞きたいところです。
横方向をハンドル構造で、縦方向をトライアッドロックでがっちり固めて軽さに見合わない強度と剛性を確保しています。確かにもっと頑丈なモデルもありますが、90gを切っているという驚異的な重量を忘れないでください。重さあたりの強度で言えばトップクラスの優秀さです。
競合
すいませんが、 省 略
詳細は本記事冒頭とエンデューラのレビューをご覧下さい。現実的に言えばエンデューラ4FFGをかなり意識していると思いますし、スペック的にも用途的にも非常に近いです。
ただし、4インチクラスという制約を付ければここまで軽量な実用モデルはありませんので競合無し(エンデューラは3.75”)!唯一無二です。アルマーイーグルは細くてちょっと用途を選ぶので正当な競合とすべきかは悩みどころです。
パッと頭に浮かぶものを上げれば全部ブロークンスカルよりも小さめではありますが、
・エンデューラ4FFG
・パシフィックソルト
・SOG イージス(写真は冒頭参照)
・マニックス2LW
これくらいですかね。いずれもアンダー100g。
まとめ
久しぶりにここまで興奮させるナイフに出会いました。でもこれは決して趣味ナイフではありません。どこまでも実用性を追い求めたナイフです。一言で言えば、
最強クレイジースペック
最初にスペックを見たときにはこれは究極のアスリート向けのナイフだなあ、と思いました。過酷なアドベンチャーレースの選手、難易度の高い山に挑戦するクライマー、危険度の高い任務に従事する特殊部隊、、、各分野の最前線を行く人々のための武器。行動スピードで足を引っ張らない軽さを実現しながらパフォーマンスを犠牲にしないナイフ、それがブロークンスカルの存在意義だと思っていました。それはそれで正しいのです。
でもこのナイフは最初思っていたよりももっともっと優しかったです。癖が無く、誰にでも使いやすいデザイン、軽さと薄さがもたらす非常に高い携帯性。最前線を攻める人々のみならず主婦や子供なんかにもとっつきやすい非常に懐の深いナイフだったのでした。あれ、コールドスチールってこーゆーメーカーだっけ笑?
実用ユーザーほど高く評価して、まっとうなナイフ好きほど評価しないであろうナイフのある意味究極系を行くナイフでした。
独断と偏見に満ちた総合評価
95/100