Dec. 22, 2017
職場や学校で何か切らなきゃいけなくてEDCナイフを出したらとなりの奴にうわ~こわ~とかいじられたことがある人はツイッターでコメントしてください!それがなぜか広まってそれ以来頭悪い奴に限ってワイルドだのサバイバリスト扱いしてきてムカついた経験がある人はツイッターでコメントして下さい!
筆者はいつもそんな感じです苦笑。使うときしか出してないし別に見せびらかしてるわけじゃないですよ?
サイト管理人の友人Sです。今回は激論になるであろうトピックです苦笑。最近ライナーの無いナイフが増えてきました。どうなんでしょうね?どこまでも現実的に考えていきましょう。フルタングの記事でも触れた考え方がまたいくつか登場すると思います。
はっきり言って筆者はフォルダーにライナーは不要だと考えています。でももちろんその主張にはアスタリスクがつくわけで、装備システム次第です。また、もちろんライナーがこうだからとか言う議論も完全ではなくて、ナイフそれぞれの材料、加工、形状といったデザインに由来する部分も大きいので一概には言えません。
フォルダーを選ぶ理由
ナイフで作業をするときフォルダーとフィクストで比べるとフィクストの方が圧倒的に優れています。まあ、当たり前ですよね。可動部分がないので強度が高く、汚れやゴミが入ったり凍ったり錆びて固着といった心配もありません。ハンドルデザインは折り畳み機構に制限されません。使うときも開くという複雑で細かい作業をする必要が無く、ただ抜くだけ。じゃあなんでわざわざフォルダーを選ぶかって?そんなわかりきってること聞くなって話ですよね。
- 軽い
- 小さい
シースが不要。ハンドルを軽くできる。折りたためる。当たり前ですね。ちなみにライナーが大きく影響するのは二つのうちの軽さの方です。
重要な点は装備としてフォルダーを選択するという事は携帯性向上という目的のためだけに様々な犠牲を払っているということです。
ライナーの効果
わかってる人は飛ばして結構です。ライナーってのはいわばハンドルの骨です。よくフォールディングナイフのハンドル材の内張りとして金属の板が入っていますがそれです。フォルダーっていうのは可動部があるのでどうしても強度的な弱点があります。縦方向の強度はロックで、横方向の強度はライナーで決まるとイメージして下さい。もちろん、相互に影響しあっているので実際にはこんな単純ではありませんが。まあここで大事なのはライナーがあれば強度が上がるってことです。特に横方向の強度は結構差が出るんじゃないでしょうか。フォルダーはどうしても強度の点で難がありますから強度が上がることは良い事です。でもやはりここで重さの問題が出ます。ライナーってのは気を付けないと簡単にフィクストと同じかひどければそれ以上の重さになります。モーラなんかはシース込みで100g強っていうレーサーマシンのようなカリッカリの超軽量仕様ですからね。。。そうなるとそもそもフォルダーを選ぶ意味は?っていう問題になるわけです。ただ小さいだけでそれ以外にメリットがありません。強度が欲しければフィクスト選べばいいわけですし、フォルダーを選択した時点で既にいろいろ犠牲にしているんだからフォルダーの利点を最大限伸ばすためにもライナー無い方が良くねみたいな議論になります。それに最近は材料や技術の進化でメーカーも積極的にライナーを省くことが可能になってきました。筆者自身、ライナーの無いフォルダーを積極的に選んで使ってきましたが、今まで問題があったことはありません。また、もちろん、ライナーロックやコンプレッションロック、アクシスロックなどのように構造上ライナーが必要なものもあります。またライナーがあると剛性やガタツキなどの耐久性の面ではやはり有利です。これらの場合でもライナーがハンドル後端まで必要なのか、どこまで肉抜きできるかなどという議論を進めていくべきだと思います。そしてそれはワッシャーは?ピボットは?という可動部の話に発展していきますが、筆者はナイフメーカーではないので結局は使ってみて機能するか、ということしかわかりません。
【追記】May.1,2018
ブロークンスカルのレビューで関連する議論をしたので参考としてこちらでも紹介します。ブロークンスカルはライナーレスハンドルを採用したクラス最軽量のフォルダーですが、軽量化をしながら強度と剛性を維持することに成功した点で高く評価できるナイフです。
(ブロークンスカルの)ハンドルはもっと軽く作ることはできたはずです。仮にFRNなどの射出成型系のハンドルで極限まで軽量化を攻めれば2oz台も実現できたでしょう。それはそれでかなり魅力的な構想ではありますが、そういうことは蜘蛛さんがやることであって、コールドスチールはそうしませんでした。その結果、ブロークンスカルはライナーレスハンドルの中では飛びぬけて剛性と強度が高くなっています。それがより多くのシステムに対応できるキャパの広さを産んだのです。
これは別に今始まったことではなく、コールドスチールのフォルダーは前世代のトライアッドロック採用への転換時にG10ハンドルモデルはライナーレス化しています。衝撃を受けたときにハンドルがたわんでショックを吸収して負荷をリニアにするなんて説もあるのですが、その辺はよくわかりません。個人的にテストしたわけではないので。ただ、軽量化につながったことは確かです。それでも決して軽量とはいえる重さではありませんでしたが、先代のウルトラロック(アクシス)世代よりもマシで道具としては正しい進化です。それを考えるとブロークンスカルの軽さはコールドスチールの本気度が伺えます。
話が長くなりましたが、ライナーを取っ払うとハンドルの横方向の強度が落ちます。コールドスチールはどうやって剛性や強度を維持しているのでしょうか?もちろん、ハンドル材のG10がそもそもFRN等と比べて強度や剛性が高いのはあります。でも鍵となるのはバックスペーサーです。これも昔からですが、コールドスチールはあえて金属製(多分ジュラルミン系?)のバックスペーサーを採用しているのです。ロックバーからバックスペーサーにかけてをひとつの芯材としてG10スケールで挟み込んでいます。何も考えずに下手にライナーを採用するよりも効率的に剛性と強度を確保できます。さらにはバックスペーサーを固定するスクリューも貫通させずに左右で互い違いにしているのも剛性向上のためでしょう。こう見直してみるとよく考えられてるな、と感心します。
G10ハンドル、金属製バックスペーサーと重量増のダブルパンチですが、得られる効果は重さに見合っていますし、そのあたりを妥協しないのがコールドスチールらしいです。というか何より、それでいてこの重さにまとめているのがすごいです。設計思想としてはライナー有の強度と剛性をライナー無しの重さで目指すみたいなとこがあったのでしょう。
ライナーというのはフォールディングナイフのハンドルの強度や剛性を改善するための手段のひとつにしかすぎないこと、そしてライナーを採用するのが唯一の選択肢ではないことをコールドスチール社は我々にはっきりと示してくれたわけです。
装備システムの要求
今回も登場しました。装備のシステム的アプローチです。ナイフだけで活動するわけじゃないですよね。たとえばEDCシステムを考えるなら連絡手段としての携帯電話、時間を知るための腕時計、暗い時のためのフラッシュライト、緊急時用の笛、それらを携帯するためのベルトなりズボン、いろいろなものでシステムが構築されています。それぞれの道具がそれぞれの役割を果たし、それらの組み合わせが装備システムとなるのです。なのでシステムを構築するひとつひとつの道具にどのような特性が求められるかはシステムによって全然違い、システム内の他の道具との関連性、適合性に注目する必要があります。そのシステムで重要な特性はなんですか?強度ですか?それとも軽さ?耐食性?システムが違えば“優秀なナイフ”の定義は違います。システムの中のあるアイテムがすごく重くて大きければ効果的に運用するには他の道具が寸法を削らなきゃいけません。頑丈なフィクストがシステムにすでに組み込まれているならフォルダーの強度はそれほど重要じゃありません。EDCのシステムは軽さも大事ですがそれよりもコンパクトさが重視されます。少々重いフォルダーでもコンパクトさ、強度や趣味性などが得られるなら問題ありません。逆にバックパッキングのシステムではとにかく軽量で実用的であることが求められます。面白くなるのは、本当はフィクストがいいんだけどシステムの制約でどうしてもサイズのあるフィクストは組み込めないっていう場面です。正直、これは結構特殊なケースだと思いますが、この場合はライナーでもなんでも必要な手段を使ってガッチガチに固めた頑丈なフォルダーが良いということになります。フォルダーにするのか、フィクストにするのか。フォルダーにするとしてライナーは無し、片側、両側、どれにするのか。肉抜きをするのか、ライナーの厚みをどうするのか。ハンドルの半分までの長さにとどめるのか。ここまで考えてしまうとハンドルの材料は何か、構造はどうか、厚み、肉抜きといったところまで見ていく必要があります。ライナーをどうするかは手段でしかないので、大事なのはだから結果的にどうなるのか、どうシステムに適合するかです。装備システムを構築するというのは想定する使い方に照らし合わせながらこれらの選択を繰り返していく作業です。使ったみて問題を見出して考えて変更する。また使ってみて考える。この繰り返しで機能するシステムに洗練されていきます。システムで最低限必要な強度を得るためにライナーが必要ならそれも良し、ライナー無しで必要な強度が得られるならさらにベター。一般的にはフォルダーをどれくらいハードに使うか、即ちフォルダーに対する依存度で必要な強度が決まってくるでしょう。ですが、他にも装備システムの要求としていろいろ考えられます。例えば、海水環境で使いたいとなった場合、金属製のライナーでは設計が複雑になります。各コンポーネンツの材料選択、海水が残留しにくい構造、などなど考えなきゃいけないことがたくさんあります。
正解はなにか
ひとつの正解なんてありません。あなたはそのナイフをどう使いますか?その答えの数だけ正解があります。大事なのは装備システムにどう組み込まれてどう使われるかです。それをきちんと考えたかがとても大事です。筆者個人の使い方では特に現代の技術の進歩を考えればライナーは必要ありません、というかむしろ邪魔です。軽さというフォルダーの良さを生かすことが組み込める装備システムの選択肢の幅を広げてくれますから。もしかしたらピボット付近だけとか部位を限定すればライナーを入れる価値があるかもしれません。その辺は筆者自身データが足りないので何とも言えません。でもどちらにせよもし強度を考えるなら最初からフィクストを選びます。でもこれは筆者自身の考え方で皆さんは全く違うかもしれません。また、ライナーはハンドルの強度を決める一つのパラメーターでしかなく、最終的にはハンドル全体、ナイフ全体で考える必要があります。ある一つの部分の性能だけ特化させても意味が無くて、バランスが取れてないと実用的ではありませんから。だからこそ、このシステムでこう使われるからこういう特性を求めるっていう思考プロセスが重要です。そしてシステムとして何が要求されるのかはいっぱい使っていっぱい考えなきゃわからないことです。なので山でも海でも思い立った時にすぐ行きましょう!
軽さを維持しながら強度を高める研究がナイフメーカーによって日々進められていますが、最終的にはいつか究極のフォルダーとしてライトセーバーが商品化されることを夢見てます(笑)。