なぜタクティカルライトに青色LED?【ロイヤルブルー】

素人の考察 Jun.5,2018


AGECアウトドアにアクセスしていただきありがとうございました。こんなしょうもないサイトですが、記事の数も100を超えました。長い間応援していただきありがとうございます。そして今後ともAGECアウトドアをよろしくお願い申し上げます。

 

どうも、サイト管理人の友人Sです。最近アマゾンでこいつ↓を見かけてポチってみました。

ソーラーフォース LC-B。お値段¥1680。

青色LED(多分CREE XR-C?)を搭載したP60互換ドロップインモジュールです。

今の時代にP60互換モジュールなんて実用目的じゃないので

青楽しい!

で¥1700の衝動買いは正当化されました笑。でもそこでふと気になった事があります。

現在の国産カスタムモジュールと言えばH2Tさんの独占市場ですが、以前はYSカスタムさんもカスタムモジュール製作をしていました。その時、YSCは田村装備開発さんと組んでロイヤルブルーのLEDをすごい推していました。でも当時はあんまり理由とか気になんなかったんですよね。

筆者は基本的にアウトドアユーザーでローライトでの戦術なんてド素人なんで、いろいろ言ってもしゃあない気もしますがやっぱり気になります。というわけで大学で微かに神経生理学を齧ったライトマニアなりに考察してみました苦笑。筆者の考察が正しいかはプロの方の反応を待つことにしましょう。なにかしら反応が頂ければ追記します。

 

ロイヤルブルーとは

LEDのカラーバリエーションのうち、450nmくらいの光を出すやつです。

これでわかる人は次の章まで読み飛ばしてください笑。

 

フラッシュライトを見ていると、同じLEDのモデルを搭載していても光の色味が違うオプションをラインナップしていることがあります。例えば同じCREE XP-LでもCW(クールホワイト)とかNW(ニュートラルホワイト)とかありますよね?このようにLEDメーカーは多くの場合、同じLEDでも複数の色の光を用意しています。

CREE XP-E2 data sheet

で、どんな色を展開しているかはLEDによって違います。CREE社の場合はだいたいは白系でWW、NW、CWの3種類の商品展開です。しかし、CREE XP-E2などのように赤、青、緑、アンバー、レッドオレンジ、ロイヤルブルーなどいろんな色を展開しているモデルもあります。そのなかで450nmくらい(LEDによって差があるので詳細はそれぞれのデータシート参照)の色をピンポイントに出すLEDの色をロイヤルブルーって言っています。450nmってのは光の波長のことで、この数字で色を表します。わからない人は“光 波長”ってググってみて下さい。

CREE XP-E2 data sheet

人の可視光の波長の範囲は約390~700nmくらいです。それより波長が短いものは紫外線、長いものは赤外線と呼ばれて見えません。ロイヤルブルーの波長域は可視光の範囲の一番端の方にあるので、人間の目ではどうしても暗く見えてしまいます。なので出力の単位がlm(ルーメン)ではなくmW(ミリワット)で表記されます。また、ビン分けもちょっと違うので要注意です。詳細はデータシートを参照してください。

 

なぜロイヤルブルー?

まず、この記事を読んでいただくにあたって、人の視覚についてサラッと説明する必要があります。知ってる人は読み飛ばしてください。

 

視覚というのはまず、人間の目にある細胞が光を感知してそれを電気信号に変えます。その電気信号は視神経から脳の後頭葉にいってデータ処理をされます。その結果我々は物を見ることができるわけです。

目の中にある光を感知する細胞にはいくつか種類があって異なる色や明るさを感知します。この段階ではどの細胞がどれくらい強く反応したかということしかわからない電気信号です。色とか明るさや形といったものはこの電気信号が脳で処理されて初めてわかることです。

目の中にあって、実際に光を感知する細胞には2種類あります。

杆体細胞(暗い時に働く)
錐体細胞(明るい時に働く)

明るい場所で働く錐体細胞には3種類あり、それぞれが異なる波長(色)の光を感知します。なので明るい場所では色がわかります。暗い場所では杆体細胞が働きますが1種類しかないので色はわかりません。

Wikipedia

↑このグラフは大事なのでよく見ておいて下さい。錐体(S,M,L)は昼に働き、杆体(R)は夜働きます。それぞれが異なる波長を感知します。

 

まあこれくらいにしといてあとは一旦ハショります。もっと知りたい人はwikiででもサラッと読んでみてください。

 

プルキンエ現象

明るいとこだと赤っぽい色が濃くはっきり見えて、逆に暗いとこだと青っぽい色が強くはっきり見えるってやつです。

先に結論を言いますと違います。この議論になると多分プルキニェ現象が出るんだろうなあって思ったので最初にきちんと否定しておきます。

 

プルキニェ現象は、明るいところでは錐体、暗いところでは杆体、と明るさによって働く視細胞が違うことによって起こります。なわけでもっかいあのグラフを出しましょう。

Wikipedia

人間が最も強く見える光の色は明るい場所では555nm、暗い場所では507nmです。暗い場所では杆体が主にが働くので杆体のピークに近い507nmが最も明るく感じられるのは納得できます。でも明るい場所で働く錐体には3種類もあってカバーしている波長も全然違います。実は青い光を感じ取るS錐体は他の錐体と比べて分布密度が極端に低いんです。なので明るい場所ではM錐体とL錐体の間の555nmが最も明るく見えるんです。

これが

夜では青っぽい(波長が短い)色が強く見えて昼は赤っぽい(波長が長い)色が強く見える

と言われる理由です。

 

でも、もし暗い時に明るく強く見える光にしたいなら青系ではなく、杆体が最もよく感知できる緑系のLEDを使うべきです

 

というか、先ほど述べたようにS錐体は分布密度が低いのでこの目的から言えば青系のLEDを使うのはむしろ逆効果です。

 

視覚情報処理の落とし穴

青でもなくあえてロイヤルブルーのLEDを使うということは明らかにS錐体を狙っています。波長が一番近いLEDです。

ロイヤルブルーLED:450nm
S錐体の吸収ピーク:420nm

でもそれならクールホワイトでもいいはずです。てか、一番強く出てるのが440nmくらいですから。

CREE XP-E2 data sheet

あえてロイヤルブルーを採用するってことは

 

S錐体だけをピンポイントに狙って、他の視細胞のカバー域はカット

 

ってことです。

 

さて、S錐体にはどのような特異性があるのか?それは脳の中で起こるデータ処理の部分に秘密があります。

先ほど述べたようにモノが見えるには、

視細胞が光を感知→電気信号に変換→脳でデータ処理→“モノが見えた!”

という経路を通って初めて“見える”わけです。

 

さて、視覚情報はどのように処理されているのでしょうか?

視細胞がそれぞれ受け取った光の強弱を電気信号にします。それらはまず最初に“輝度チャンネル”と“反対色チャンネル”という経路を通ってからより複雑な視覚情報処理が行われます。輝度チャンネルは明るさ、反対色チャンネルは色を判別すると思ってください。

輝度チャンネルと反対色チャンネルは時間的応答性に違いがあります。輝度チャンネルの方が反対色チャンネルよりも素早く反応できるんです。

で、S錐体は他の錐体と違って輝度チャンネルを経由しません。反対色チャンネルだけです。要するに、

 

青色の光では咄嗟の状況に対応できない

 

ってことです。これがロイヤルブルーのLEDを使う理由だと推測します。

 

※詳しく書くと長くなるのでかなり省略して書きましたが、詳しく知りたい方はこちらなどで詳しく書いてありしたので参考にして下さい

 

メリットはあるのか?

はっきり言ってわかりません。筆者はあくまでもフラッシャホリックであってローライトの戦術に関しては素人ですから。

でも効果があるとしたらシュアファイアが採用してるとおもいます。なんだかんだ言っても銃器と懐中電灯の組み合わせを考えた張本人ですし、ローライトでの戦術に関しては何十年も研究していますから。

だから、結構ニッチな用途なのかな?とも思います。その辺がどうなのかは本職の方々の反応を待つことにしましょう。今後どこかで反応がいただければ追記します。

システムの視点から見れば、ロイヤルブルーのLEDは全く汎用性がありません。なので、別途白色LEDのライトを持たなきゃいけません。その特殊性のせいであまり広がらないでいるのかなとも思います。CWのLEDは波長の短い光もたくさん出しているのでCWのLED+ブルーフィルターというのは1つの手かもしれません。ただ、フィルターは大抵放熱性を低下させてしまいます。それは以前の記事でも述べたようにLEDライトでは問題です↓。

なぜフラッシュライトは金属製?

2017.12.05

 

ちなみにブルーライトがどうのこうの言う人がもしいたら、先ほどのグラフでも見たようにCWでもかなりヤバいですからね。ロイヤルブルーだけが特にヤバいわけじゃありません。そもそもフラッシュライトの直視なんて網膜に明らかによろしくありません笑。ご注意下さい。

 

どこで買える?

ロイヤルブルーのモジュールに興味ある方はezliteやアカリセンターからH2Tのカスタムモジュールをオーダーできると思います。

真面目に実用したい人はキセノン規格のタワーモジュールやドロップインモジュールはどうしても放熱性や寸法、光学系の面で欠点がありますからオススメしません。それよりは積み替えや新しいヘッドを組むことを勧めます。詳細はこちらの記事参照↓。

キセノンのLED化は性能低下?

2018.07.22

 

LEDに関しては今までフラッシュライトでロイヤルブルーのLEDを搭載するとなると入力が最大1AのCREE XP-E2くらいしかありませんでした。

それが去年、CREE XP-G3のロイヤルブルーが発売されました。XP-G3は最大2Aでドライブできるので今までではあり得ないレベルにまで大幅に出力アップができます。ちなみにXP-G3にするとビームパターンも広角になります(詳細は別記事参照↓)。

フラッシュライト光学系の基礎2

2017.12.03

CREE XP-G3 data sheet

ちなみに、フラッシュライトで広く使われるチップタイプの高出力LEDは青色LEDに蛍光体が塗ってある構造です。青系のLEDは光を青いまんま出せば良いので蛍光体の部分が真っ白です。

また、同じロイヤルブルーでも波長が微妙に違うのでこだわる人はデータシートを、、、ってそういう人は言わなくてももうその辺もちゃんとわかってるか苦笑。

 

ABOUTこの記事をかいた人

ストイックに理詰めで装備システムを構築する実用主義者。ponkyがデザイナーならSはエンジニア(B2は中間でバランス良い)。Sからすれば実用性第一で見た目は二の次のようだ。体力はないが、読図やロープワークは超得意。
イギリス生まれなのにアメリカ英語しか使えない日本育ち。